リヤカーが完成してから数日後、私は兄たちと護衛のおじさんを連れて、となりの町へ出張することになった。
父は「行ってこい、気をつけるんだぞ」と優しく送り出してくれる。
母はお弁当をたくさん持たせてくれた。
「よし、出発ー!」
リヤカーをつけた自転車は軽やかに走り出す。
荷台には空の箱がたくさん積まれている。
行く先々で要らないものを集めて、それを等価交換で生まれ変わらせる――それが今日の出張買取サービスだ。
◇◇◇
となり町に着くと、すぐに人だかりができた。
「これを何とかしてくれないか?」と出てきたのは、ぽっきり折れた鍬の柄。
私はそれを新しい鍬に変えて渡すと、農夫さんは目を丸くして喜んでくれた。
「こっちは古い井戸でね、水がもう出なくて……。」
とおばあさんが困った顔をする。私は井戸をのぞき込み、考えた。
「等価交換……ポンプに!」
すると井戸の枠が変形し、ハンドルを回すと水が汲めるポンプに変わった。おばあさんは涙を浮かべて「これで畑が守れるよ」と手を握ってくれた。
「うちの家畜小屋の柵をもう少し高くしたいんだが……。」とおじさんが言えば、私は古い板を集めてイメージする。
「等価交換……頑丈で高い柵に!」
光が走り、立派な柵が出来上がると、牛たちが中でのんびりと草を食べはじめる。
町の人たちは「すごいぞ!」「こんなことができるのか!」と口々に驚き、兄たちは誇らしげに胸を張っていた。
◇◇◇
「これなら……私たち、いろんなところを回れるね!」 「次はどの町に行く?」と兄たちがわくわくした顔で私を見る。
護衛のおじさんは頼もしい声で「どこだって守ってやるさ」と言ってくれた。
リヤカーに乗せた荷物は次第に新品同様の道具や、輝く食器でいっぱいになっていく。
私は自転車のハンドルを握りしめた。風が頬をなで、町の人たちの笑顔が背中を押してくれる。
「等価交換の可能性は……無限大だよ!」
ネセレ、4歳。リヤカーを引いて隣町まで出張し、無限の夢を広げた秋の出来事である。