王都での出張販売が好評すぎて、私たちのお店の在庫はほとんどなくなってしまった。
兄たちが空になった棚を見て肩を落とす。
「どうしよう、もう売るものがないよ……。」
「せっかく王都に来たのに!」
私は少し考えてから、胸を張って言った。
「じゃあ、お金で新しい材料を買って、また作ればいいんだよ!」
◇◇◇
護衛のおじさんと兄たちと一緒に市場を回る。
色とりどりの果物が山のように積まれ、香ばしい香りが漂う。
「このバナナ、ください!」
「このチョコレートも!」
コインを払って材料を買い込み、リヤカーに積み込む。次は、甘い香りの屋台で赤く艶やかなリンゴと、透明なアメを手に入れた。
「さあ、これで……!」
市場の片隅にある調理場を借りて、私は手をかざす。
「バナナとチョコをあわせて……等価交換、チョコバナナに!」
バナナがチョコレートでつややかにコーティングされ、冷やせば固まって食べやすくなった。
「わぁ!おいしそう!」 兄たちが嬉しそうにかぶりつくと、にっこり笑顔になった。
「じゃあ次は、アメとリンゴ……等価交換、りんご飴に!」
赤いリンゴが飴で包まれ、光を受けて宝石のように輝く。子どもたちが目を輝かせて列を作る。
「うまい!」
「こんなの初めてだ!」
◇◇◇
甘いものばかりじゃない。
私はふと、道具屋の隅に並んでいた古いからくり仕掛けに目を留めた。
歯車や小さな部品がぎっしりと詰まっている。
「これ、ください!」
買い取ったからくりを広げ、細かな部品をひとつひとつ見つめる。
前世の記憶が頭をよぎる。
精密で、時間を刻む道具――時計。
「等価交換……からくりを、精密な時計に!」
光がほとばしり、からくりの歯車が組み替わり、カチリと音を立てて針が動き出す。
美しい装飾が施された懐中時計が手の中に収まった。
「わぁ……!」
「こんなに小さいのに、ちゃんと動いてる!」
護衛のおじさんが目を丸くし、兄たちも興奮気味に覗き込む。
お客さんたちも口々に「これはすごい!」「ぜひ欲しい!」と声を上げた。
◇◇◇
「よし、これでまたいっぱい売れるね!」
私は笑顔でリヤカーを見た。
新しく作ったチョコバナナ、りんご飴、そして精密な時計が並んでいる。
そのどれもが、これまでにない輝きを放っていた。
ネセレ、4歳。お金で材料を買い、等価交換で新しい夢を形にした冬の出来事である。