王都から帰ってきた日の夜、私は大きな袋に入ったコインを父に手渡した。
父は目を丸くしてから、優しく笑ってその袋を抱えた。
「ネセレ、こんなに……!これはお父さんが預かっておくからな。」
「お願いね!」
父は袋を撫でながら、遠くを見つめるように言った。
「これだけあれば、大工を雇ってお店をもっと大きくするのもいいかもしれんなあ……。」
兄たちは目を輝かせて「じゃあカウンターも増やして!」「商品を並べる棚も!」と大騒ぎ。
私は笑いながら頷いた。
◇◇◇
その夜、リサイクルショップの作戦会議が開かれた。
母、兄たち、護衛のおじさんが机を囲み、私が椅子の上で足をぶらぶらさせながら考える。
「本物の金や宝石を仕入れて、もっとすごいものを作ってみるのは?」
「でもそれだと……お金が足りないよ!」兄が眉を寄せる。
「じゃあ……稼ぐために新しい商品を作ろう!」
私がそう言うと、みんなの顔がぱっと明るくなった。
◇◇◇
翌日、私は作業台の上に透明な塊を置いた。
前世で知っている素材――プラスチック。
古い樹脂の部品や割れた玩具を集めて、両手をかざす。
「等価交換……プラスチックのお皿に!」
光が走り、カラフルで軽く、割れにくいお皿ができあがる。
兄たちは「おおーっ!」と歓声を上げ、母は「これなら小さい子が使っても安心ね」と微笑んだ。
「次は……アクセサリー!」
古いプラスチック片を組み合わせると、可愛いビーズのようなネックレスやブレスレットが現れる。
庭に来ていた子どもたちは大喜びで「これ欲しい!」「かわいい!」と手を伸ばした。
◇◇◇
「よし、子どもが使うものなら……」 私はさらにイメージを膨らませる。
小さな包丁やフォーク、スプーンをプラスチックで作ると、角が丸く、軽くて安全なものができあがった。
「これなら貴族のお子さま用にもいいかもしれませんね。」母が感心したようにつぶやく。
早速王都に持っていくと、貴族のお屋敷で「子どもが安心して使える!」と評判になり、注文が次々と舞い込んできた。
お店のカウンターの奥で、兄たちは包装や発送に大忙し。
護衛のおじさんは「これなら狙われることもなさそうだな」と笑っていた。
◇◇◇
「異界の錬金釜製なら安心安全!」 そんな言葉が町でも王都でも広まり、リサイクルショップはまたひとつ新しい可能性を手に入れた。
ネセレ、4歳。稼ぐための新商品を生み出し、未来の夢をさらに大きくした春の出来事である。