目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第17話:5歳のお誕生日と大きなお店の挑戦

春のやわらかな風が頬をくすぐる日、私は5歳の誕生日を迎えた。


広間に集まった家族の顔が一斉に笑顔になり、兄たちが揃って声をあげる。


「ネセレ、お誕生日おめでとう!」


「もう5さいだ!」


母が大きな箱を私の前に差し出した。


リボンをほどくと、中から出てきたのは小さな帽子。


兄たちとお揃いのデザインで、胸がじんわりと温かくなる。


「これ、みんなとお揃い!」


「そうよ、お店の制服に合わせて作ったの。」


母が微笑むと、兄たちも帽子を被ってくるりと回って見せてくれる。


「それから……お父さんからもプレゼントがあるぞ。」


父が少し照れくさそうに笑い、庭の奥へ案内してくれた。そこには――新しく建て増しされた、大きくなったお店があった。木の香りが新鮮で、窓から差し込む光が床を照らしている。


「すごい……!大きくなってる!」


「これで、もっとたくさんのお客さんを迎えられるね!」


兄たちが目を輝かせ、私は胸が高鳴った。


◇◇◇


せっかくお店が大きくなったのだから、並べるものも大きくしたい。


そう思って、私はさっそく新しい挑戦に取りかかる。


「まずは……この古いカーテンを……等価交換!」


光が走り、くすんだ布は繊細な刺繍の入った新しいカーテンへと変わる。


窓にかけると、部屋全体がぱっと明るくなった。


「次は、テーブル!」


傷だらけの木材を組み合わせると、艶やかに磨かれた立派なテーブルに生まれ変わる。護衛のおじさんが「こりゃ職人顔負けだな」と感心する。


「じゃあ椅子も……!」


折れていた脚を組み直し、座面を柔らかい布で覆う。


瞬く間に上品なダイニングチェアが完成した。


兄たちが座って「座り心地最高!」と笑う。


「最後は……タンス!」


倉庫で眠っていた壊れたタンスを引き出し、心の中でイメージを膨らませる。


丈夫で、引き出しが滑らかに動き、細工の美しい取っ手がついたタンスに。


光が収まると、目の前には新しいタンスが立っていた。


木目の美しさに母が思わず手を伸ばし、「こんな綺麗な細工、買ったときより価値が上がっているわね」と笑った。


◇◇◇


「これなら王都でも高く売れるね!」


兄たちがタンスの引き出しを開け閉めしながら感嘆の声をあげる。私は帽子をかぶり直して、カウンターの奥から大きく頷いた。


「よし!これからは大きなものにも挑戦して、もっともっとすごいお店にしよう!」


新しくなったお店に、家族と未来への夢を乗せて。今日も私は、等価交換の魔法を広げていく。


ネセレ、5歳。大きくなったお店と新しい帽子で、さらに大きな挑戦を始めた春の出来事である。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?