初夏のある日、私はお店の奥の作業台に座り込み、たくさんのからくり部品を前に考え込んでいた。
前世の記憶を辿りながら、何か新しいものを作りたい。そんな衝動が胸の奥からわき上がってくる。
「ネセレ、今日は何を作るの?」と兄がのぞき込む。
「ふふ、秘密だよ……でも、動くもの!」
私は小さな車輪とからくりの歯車を組み合わせ、両手をかざす。
「等価交換……ラジコンカーに!」
光が走り、作業台の上に小さな車が現れる。
ボディはつややかで、後ろには小さなアンテナ。
兄たちが歓声を上げた。
「わあ!動くの?」
私はハンドル型の小さな装置を握りしめ、そっと操作する。すると、ラジコンカーはスルスルと走り出し、机の上を走り回った。
「すごい!」
「どこで覚えたの!?」
「私のからくり部品がこんなに!」と母が苦笑する。
確かにからくり部品をかなり消費してしまった。
◇◇◇
「本物の車を作るには……もっと大きな部品と、たくさんのお金が必要だな。」護衛のおじさんがラジコンカーを手に取りながら呟く。
「そうね、すぐには難しいかもしれないわね。」母も頷く。
私は少し考えてから、にっこり笑った。
「じゃあ、まずはミニカーとラジコンカーを売ってお金を集めよう!」
◇◇◇
翌日、店のカウンターには新しく作ったミニカーとラジコンカーが並んだ。色とりどりのボディ、かわいいフォルムに、子どもたちの目が輝く。
「これ、動くんですか!?」
「わぁ、すごい!」
兄たちが得意げに説明する。
「このラジコンカーは前にも後ろにも動くし、カーブも曲がれるんだよ!」
「こっちはミニカー!集めて並べると町みたいになるんだ!」
大人たちも興味深そうに覗き込み、「うちの子にぜひ!」とコインを差し出す。
兄たちは包装に大忙し、護衛のおじさんは人混みを見守り、私は笑顔で次々と商品を手渡した。
◇◇◇
「これなら……子どもが乗れるくらいのサイズも作れそうだね!」
私は試作品のラジコンカーを見つめ、胸を高鳴らせた。
前世で憧れた小さな電動車、今なら等価交換の力で形にできるかもしれない。
「よし!次はもっと大きいのを作ってみよう!」
ネセレ、5歳。小さなラジコンカーから大きな夢を描き始めた初夏の出来事である。