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第21話:人をダメにするベッド誕生!

秋も深まり、王都でのお仕事がひと段落したある日のこと。


昼下がりの陽射しが差し込む部屋で、私はいつものようにお昼寝の時間を迎えていた。


「なんだか最近……このベッド、ふかふか感が足りないなぁ……。」


小さな身体を寝返りさせながら、私は考え込んだ。


もっとこう、包み込まれるようなやわらかさがほしい。前世の記憶が、ふっと頭をよぎる。


「……あれだ、人をダメにするクッション……!」


◇◇◇


私は倉庫に向かい、柔らかい布や中綿、古い座布団などを集めてくる。兄たちが不思議そうに首をかしげた。


「ネセレ、なに作るの?」


「ふかふかで……もう起き上がれないくらい気持ちいいベッド!」


「……またすごいのを思いついたな。」


護衛のおじさんが苦笑する。


作業台の上に布を広げ、中綿やビーズ状の小さな素材をイメージしながら両手をかざす。


「等価交換……人をダメにするベッドに!」


光が走り、目の前に現れたのは巨大なビーズクッション。


ふっくらと膨らんだ生地は触れるだけで沈み込み、身体を優しく包み込む。


「わぁぁぁ……!」兄たちが一斉に飛び込み、ふかふかに埋もれる。


「なにこれ!出られない!」


「気持ちいい……!」


私もそっと横になってみると、柔らかさに身体が溶けるようだった。


「……もう、お昼寝から起きられないかも。」


◇◇◇


新しいベッドの噂は瞬く間に広がった。


お店に並べると、村の人や王都からのお客さんが次々と買い求める。


「腰が痛くなくなったわ!」


「子どもがずっと寝てくれる!」


そしてある日、旅人が興奮した様子で教えてくれた。


「聞いたか?隣国の皇帝様が、このベッドをお使いになっているらしいぞ!」


「えっ、ほんと?」


「不眠症でお困りだったそうだが、これを使ったらぐっすり眠れるようになったとか!」


私は思わず笑顔になった。前世の知識が、遠い国の誰かの眠りを救っているなんて。


「これからも、もっといいものを作っていこう!」


ネセレ、5歳。お昼寝から生まれた人をダメにするベッドが、隣国まで眠りの魔法を届けた初冬の出来事である。

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