冬の風が窓を揺らし、吐く息が白くなる朝。私は寝室でごそごそと布団にくるまりながら思った。
「……冬は寒いから、もっとあったかくてふかふかのお布団がほしいな……。」
前世の記憶をたぐり寄せる。
あのときの、体を包むような毛布、やわらかい羽毛布団――いや、もっとすごいのを作ろう。
私は作業台に向かい、家中の古い毛布や薄い布団を集めて積み上げた。
「ネセレ、今度は何を作るの?」
兄たちが興味津々でのぞき込む。
「ふかふかで、あったかくて……まるで高級羊毛で作ったみたいなお布団!」
「高級羊毛?でも、羊毛を集めるのって大変なんじゃないか?」
護衛のおじさんが眉をひそめる。
「そうだよ、いっぱい綿や羽毛がいるんじゃ……?」
兄たちが心配そうに言った。
私はふふっと笑って首を振った。
「だいじょうぶ。材料はもうここにあるものだけでいいの。」
◇◇◇
布団と毛布を高く積み上げ、両手をかざして心の中でイメージを膨らませる。
雪の日でも暖かい毛布、体を包み込むふかふかの布団……素材はすべて上質な羊毛に変える。
「等価交換……あったかい毛布とふかふか布団に!」
光が布団を包み、やがて収まると、そこには贅沢な手触りの毛布と布団が重なっていた。
ふわりと触れるだけで暖かさが伝わり、柔らかさに指が沈み込む。
「わぁ……!」母が目を丸くし、兄たちはさっそく飛び込んで「ふかふかだー!」「あったかいー!」と大はしゃぎ。
護衛のおじさんもそっと毛布を手に取り、「こりゃ本物の羊毛以上の出来だな……」と感心する。
「これなら、寒い冬の夜も安心だね!」
◇◇◇
「……でもやっぱり、不思議だな。羊毛にするのに、なんで綿や羽毛がいらないんだ?」 兄たちが首をかしげる。
私はにっこり笑って言った。 「だって、等価交換の魔法だから。想像したものにちゃんと変えてくれるんだよ。」
「さすがネセレだな!」兄たちが笑顔で私を囲み、母も誇らしげに頷いた。
こうして生まれた魔法のお布団は、家族や村の人たちに配られ、みんなの冬を温めることになった。
ネセレ、5歳。寒い冬をふかふかで暖かいお布団で乗り切った冬の出来事である。