冬の晴れ間、店のカウンターの奥で帳簿をつけていると、ふと視界に護衛のおじさんの姿が映った。
いつも門のそばで寒さに耐え、鋭い目を光らせているその背中に、胸がじんわりと温かくなる。
(……いつも守ってくれて、ありがとう。)
私は椅子から飛び降り、作業台へ向かった。
兄たちが不思議そうに首をかしげる。
「ネセレ、何作るの?」
「おじさんに、ありがとうの気持ちをこめて……新しい鎧!」
「鎧?でも重いと動きづらいし、暑いんじゃない?」と兄が心配する。
「だからね、通気性がよくて、軽くて、でもすごく強いものを作るの。」
前世の記憶がよみがえる。
セラミック製の防弾チョッキ――軽くて頑丈、そして通気性も考慮された現代の技術。
◇◇◇
私は倉庫から古い鎧のパーツや金属片、陶器の破片を集め、作業台に並べた。両手をかざし、強くイメージする。
「等価交換……軽くて通気性のいい、セラミックの鎧に!」
光が走り、素材たちが組み替わる。
やがて現れたのは、白く輝くセラミック製のプレートを組み込んだ鎧だった。
肩や胸には通気孔があり、内部は動きやすい柔軟な素材で覆われている。
「……これが、おじさんの新しい鎧!」
◇◇◇
私は鎧を抱えて門のところまで駆けていった。
「おじさん!いつも守ってくれてありがとう!これ、作ったの!」
護衛のおじさんは目を丸くし、しばらく鎧を眺めてから、ゆっくりと受け取った。
「……こりゃあ……本当に俺に?」
「うん!軽くて動きやすいし、ちゃんと守れるから!」
おじさんは無言で鎧を身につけ、腕を上げ下げして動きを確かめる。
軽やかな動きに驚いたように目を見開き、やがて優しい笑みを浮かべた。
「……ありがとな、ネセレ。こんな鎧、見たこともねぇ。」
「これからも、よろしくね!」
「任せとけ。俺は、これからもずっとお前とお店を守るさ。」
兄たちが「似合う!」「かっこいい!」と駆け寄り、母も「とても素敵よ」と笑顔で見守った。
父は遠くから満足げに頷いている。
こうして生まれた特製の鎧は、おじさんの誇りとなり、店の新たな伝説となった。
ネセレ、5歳。護衛のおじさんへの感謝を込めて、未来を守る鎧を作った冬の出来事である。