雪がちらつく寒い夜。
店先で手をこすりながら、私はふと思った。
「……寒い冬には、やっぱり暖かいお風呂が一番だよね。」
でもただのお風呂じゃつまらない。
前世で覚えている、あの楽しい入浴剤を思い出す。
湯に入れるとしゅわしゅわ溶けて、いい香りが広がって、肌がすべすべになる。
中から小さなお人形が出てくるやつもあったっけ……。
「よし、作ってみよう!」
◇◇◇
作業台の上に香草や花びら、ミネラルの入った塩を並べる。
兄たちが興味津々で見ている。
「ネセレ、今度は何を?」
「お風呂に入れると気持ちよくなる、魔法みたいな粉!」
護衛のおじさんは笑って「また変わったもんを作るな」と腕を組む。
私はにっこり笑い、両手をかざした。
「等価交換……しゅわしゅわで体にいい入浴剤に!」
光が走り、机の上には丸い玉や可愛い形の入浴剤がずらりと並んだ。
花の香りのもの、柑橘の香りのもの、しゅわしゅわ感を強めたもの……バリエーションはたっぷり。
「これならお風呂が楽しくなるよ!」
さらに私は、前世の記憶を頼りに、ちいさな人形を中に仕込んだ特別バージョンも作ってみた。
溶けたあとに湯船からちょこんと現れる小さな騎士やお姫さまの人形。
「わぁ!」「かわいい!」兄たちが歓声を上げ、母は「まぁ……お風呂が楽しみになるわね」と微笑んだ。
◇◇◇
お店に並べると、たちまち評判に。村の人々はもちろん、王都からも「この入浴剤を!」と注文が届くようになった。
ある日、旅人が興奮気味に教えてくれた。
「聞いたか?王妃様もお使いになってるらしいぞ!」
「えっ、本当に?」
「ええ、香りが素晴らしいってご満悦だったそうだ!」
私は思わず笑顔になった。
寒い冬の夜に、王妃様までもが私の入浴剤でほっとしてくれるなんて。
「よーし、次はもっとすごいのを作ろうかな!」
ネセレ、5歳。しゅわしゅわ入浴剤で寒い冬を暖かくし、王妃様の心まで温めた冬の出来事である。