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第25話:お花見弁当、できました!

春がやってきた。


庭の桜が満開に咲き誇り、風にのって花びらがひらひらと舞う。


兄たちと並んでその光景を眺めていると、胸がわくわくしてきた。


「お花見といえば……やっぱりお弁当だよね!」


「お弁当?ネセレ、今度はどんなものを作るの?」


兄が目を輝かせる。


「今回はね、能力だけじゃなくて、ちゃんと料理もするんだよ!」


◇◇◇


私は台所に立ち、兄たちと一緒に包丁を握った。


初めての挑戦に、兄たちの顔は真剣だ。


「おにぎりはこう握るの?」


「卵焼きって、こんなに難しいんだ……!」


母が微笑みながら手伝ってくれる。


「そうよ、丁寧にやれば大丈夫。」


ただ、からあげを揚げるのはちょっと大変だった。


私はにっこり笑って手をかざす。


「等価交換……ジューシーなからあげに!」


光が走り、カリカリに揚がった香ばしいからあげが山盛りに現れる。


兄たちは歓声をあげて口をそろえる。


「これならおいしそう!」


「じゃあ、お弁当箱も必要だね。」


古い木箱をいくつか並べ、心の中でイメージする。


軽くて丈夫で、きれいな塗装がしてあるもの。


「等価交換……かわいいお弁当箱に!」


光が収まると、桜の模様が入った素敵なお弁当箱がいくつもできあがった。


母がそっと手に取り、「まぁ……これなら王都でも売れるわね」と微笑む。


◇◇◇


お店に並べると、花見客が次々にやってきた。


「おにぎりも入ってるの?」


「からあげも!」


「卵焼きも!」


兄たちは慣れない手つきでお弁当を詰めながらも、楽しそうに声をあげる。


「はい、できたてですよ!」


「こっちは卵焼き多めです!」


護衛のおじさんが「こんなに忙しいのは久しぶりだな」と笑い、父は桜を見上げながら「これもまたいい商売だな」と頷いた。


◇◇◇


「能力だけじゃなくて、みんなで作ったお弁当だから……もっとおいしい気がするね。」


私はカウンターの奥でにこっと笑った。


風に乗って桜の花びらが舞い、庭いっぱいに春の香りが広がっていく。


ネセレ、5歳。初めての料理と等価交換で生まれたお花見弁当が、春の喜びを運んだ出来事である。

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