春がやってきた。
庭の桜が満開に咲き誇り、風にのって花びらがひらひらと舞う。
兄たちと並んでその光景を眺めていると、胸がわくわくしてきた。
「お花見といえば……やっぱりお弁当だよね!」
「お弁当?ネセレ、今度はどんなものを作るの?」
兄が目を輝かせる。
「今回はね、能力だけじゃなくて、ちゃんと料理もするんだよ!」
◇◇◇
私は台所に立ち、兄たちと一緒に包丁を握った。
初めての挑戦に、兄たちの顔は真剣だ。
「おにぎりはこう握るの?」
「卵焼きって、こんなに難しいんだ……!」
母が微笑みながら手伝ってくれる。
「そうよ、丁寧にやれば大丈夫。」
ただ、からあげを揚げるのはちょっと大変だった。
私はにっこり笑って手をかざす。
「等価交換……ジューシーなからあげに!」
光が走り、カリカリに揚がった香ばしいからあげが山盛りに現れる。
兄たちは歓声をあげて口をそろえる。
「これならおいしそう!」
「じゃあ、お弁当箱も必要だね。」
古い木箱をいくつか並べ、心の中でイメージする。
軽くて丈夫で、きれいな塗装がしてあるもの。
「等価交換……かわいいお弁当箱に!」
光が収まると、桜の模様が入った素敵なお弁当箱がいくつもできあがった。
母がそっと手に取り、「まぁ……これなら王都でも売れるわね」と微笑む。
◇◇◇
お店に並べると、花見客が次々にやってきた。
「おにぎりも入ってるの?」
「からあげも!」
「卵焼きも!」
兄たちは慣れない手つきでお弁当を詰めながらも、楽しそうに声をあげる。
「はい、できたてですよ!」
「こっちは卵焼き多めです!」
護衛のおじさんが「こんなに忙しいのは久しぶりだな」と笑い、父は桜を見上げながら「これもまたいい商売だな」と頷いた。
◇◇◇
「能力だけじゃなくて、みんなで作ったお弁当だから……もっとおいしい気がするね。」
私はカウンターの奥でにこっと笑った。
風に乗って桜の花びらが舞い、庭いっぱいに春の香りが広がっていく。
ネセレ、5歳。初めての料理と等価交換で生まれたお花見弁当が、春の喜びを運んだ出来事である。