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第26話:お花から生まれた香水と染料

春のお花見が終わったあと、庭に残った花びらを見つめながら、私はふと思った。


「……お花を等価交換したら、何になるんだろう?」


兄たちが首をかしげる。


「お花を?」


「花束にするの?」


「ううん、もっと違うもの……よし、試してみよう!」


◇◇◇


私は庭や野原を駆け回り、色とりどりの花を集めてきた。


桜の花びら、バラ、ラベンダー、菫の花……籠いっぱいに積んで作業台に並べると、部屋いっぱいに甘い香りが広がった。


「等価交換……お花を、素敵なものに!」


両手をかざすと、光が花々を包み込む。


花びらが舞い、やがてそこに現れたのは、透明な小瓶に入った芳しい香水だった。


ひとつひとつ違う香りがして、色合いもほんのり美しい。


「すごい!」「いい匂いだ!」兄たちが次々と試し、母も「まぁ……高級店に並んでいそうね」と目を輝かせる。


「次は……これを染料にしてみよう!」


再び手をかざし、今度は鮮やかな布を思い描く。すると光の中から、花の色をそのまま閉じ込めたような染料が生まれた。深紅、淡紫、柔らかな黄色……どれも繊細で美しい。


「これで布を染めたら……素敵なドレスになるね!」 兄たちは「また売れちゃうぞ!」と笑い、護衛のおじさんは「お前の頭の中は本当に不思議だな」と感心したように呟いた。


◇◇◇


お店に並べてみると、芸術家や奥様方が次々と訪れた。


「こんなにいい香り、初めてだわ!」


「この染料なら、最高の絵の具になるわね!」


「新しいドレスを作りたいの!」


お店はあっという間に華やかな空気に包まれ、兄たちは笑顔で商品を手渡し続ける。母は「お花がこんな風に生まれ変わるなんて」と感慨深そうに目を細めた。


私はカウンターの奥で小瓶を手に取り、香りを胸いっぱいに吸い込んだ。


「……お花って、こんなにたくさんの可能性を持っているんだね。」


ネセレ、5歳。春の花から生まれた香水と染料が、芸術家や奥様方を魅了した出来事である。

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