目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第28話:傭兵団のお客さまたち

ある日、庭先にたくさんの足音が近づいてきた。


リヤカーを片付けていた兄たちが驚いて門の方を見やると、大きな影がいくつも現れる。


「おじさん!たくさんの人が来たよ!」


護衛のおじさんが顔を上げて笑った。


「おお……あいつらか。俺の昔の仲間、傭兵団だ。」


◇◇◇


たくましい体つきの人たちがぞろぞろとやってきて、庭の前で一斉に頭を下げた。


「久しぶりだな、相棒!ここが噂の『異界の錬金釜』か?」


おじさんは誇らしげに胸を張る。


「ああ、俺が護衛してる店だ。腕のいい錬金術師がいるんだぜ。」


私はにっこり笑ってカウンターに立った。


「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」


「これ、直せるか?」と出されたのは、へこんだ鍋やひび割れた鎧。


中には折れた剣や破れたテントまであった。


「もちろん!任せてください!」


◇◇◇


私は次々と素材を手に取り、両手をかざしてイメージする。 「等価交換……丈夫なテントに!」 光が走り、ボロボロだった布がぴんと張った大きなテントへと変わる。


「次は……この剣を、折れない剣に!」


鋭く光る新しい剣が現れ、傭兵さんが驚きの声をあげる。


「鎧もお願いします!」


「等価交換……軽くて強い鎧に!」


通気性のいい、しっかりとした鎧が出来上がり、傭兵団の仲間たちは感嘆の声をあげた。


「すげえな……!」


「これなら次の任務も安心だ!」


◇◇◇


お礼にと、彼らはたくさんの肉を置いていった。


分厚い塊、香り高い肉の数々。


「これ、食べてくれ!」


私はにっこり笑い、また手をかざした。


「等価交換……保存がきくように、ハムとベーコンに!」


光が収まると、香ばしい匂いと共においしそうなハムとベーコンが山のように現れた。兄たちは大喜びで袋に詰め、村の人たちに分けて回る。


「みんなで食べよう!」


「わあ、おいしそう!」


護衛のおじさんは、傭兵団の仲間たちと笑い合いながらハムを頬張っていた。


「ネセレ、ありがとな。これであいつらも助かる。」


私は胸を張って笑った。


「また何かあったら言ってね!」


ネセレ、5歳。傭兵団を迎え、壊れた道具を次々と生まれ変わらせ、美味しいごちそうでみんなを笑顔にした秋の出来事である。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?