ある日、庭先にたくさんの足音が近づいてきた。
リヤカーを片付けていた兄たちが驚いて門の方を見やると、大きな影がいくつも現れる。
「おじさん!たくさんの人が来たよ!」
護衛のおじさんが顔を上げて笑った。
「おお……あいつらか。俺の昔の仲間、傭兵団だ。」
◇◇◇
たくましい体つきの人たちがぞろぞろとやってきて、庭の前で一斉に頭を下げた。
「久しぶりだな、相棒!ここが噂の『異界の錬金釜』か?」
おじさんは誇らしげに胸を張る。
「ああ、俺が護衛してる店だ。腕のいい錬金術師がいるんだぜ。」
私はにっこり笑ってカウンターに立った。
「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」
「これ、直せるか?」と出されたのは、へこんだ鍋やひび割れた鎧。
中には折れた剣や破れたテントまであった。
「もちろん!任せてください!」
◇◇◇
私は次々と素材を手に取り、両手をかざしてイメージする。 「等価交換……丈夫なテントに!」 光が走り、ボロボロだった布がぴんと張った大きなテントへと変わる。
「次は……この剣を、折れない剣に!」
鋭く光る新しい剣が現れ、傭兵さんが驚きの声をあげる。
「鎧もお願いします!」
「等価交換……軽くて強い鎧に!」
通気性のいい、しっかりとした鎧が出来上がり、傭兵団の仲間たちは感嘆の声をあげた。
「すげえな……!」
「これなら次の任務も安心だ!」
◇◇◇
お礼にと、彼らはたくさんの肉を置いていった。
分厚い塊、香り高い肉の数々。
「これ、食べてくれ!」
私はにっこり笑い、また手をかざした。
「等価交換……保存がきくように、ハムとベーコンに!」
光が収まると、香ばしい匂いと共においしそうなハムとベーコンが山のように現れた。兄たちは大喜びで袋に詰め、村の人たちに分けて回る。
「みんなで食べよう!」
「わあ、おいしそう!」
護衛のおじさんは、傭兵団の仲間たちと笑い合いながらハムを頬張っていた。
「ネセレ、ありがとな。これであいつらも助かる。」
私は胸を張って笑った。
「また何かあったら言ってね!」
ネセレ、5歳。傭兵団を迎え、壊れた道具を次々と生まれ変わらせ、美味しいごちそうでみんなを笑顔にした秋の出来事である。