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第32話:隣国の村を救え!

「魔物が暴れているらしい……。」


そんな噂が王都から届いたのは、冷たい風が吹く日のことだった。


護衛のおじさんが険しい顔で伝えてくれる。


「隣国の村が襲われて、家々が壊れてるそうだ。」


「……危ないから、私たちが行くわけには……。」


母が心配そうに言うと、おじさんは首を横に振った。


「戦場には行かせねぇ。でも跡地の修復なら頼まれた。俺がついていく。」


「修復……?」


私は胸に手を当てて考えた。


お店を離れるのは不安だけれど、困っている人たちがいるなら――。


「……行こう!リサイクルショップだって、人を助けるためにあるんだから!」


◇◇◇


父が倉庫を開けてくれて、兄たちが力いっぱい資材を運び出す。


割れた木材、壊れた家具、残った瓦……


「これで足りるかな?」


「まだまだ運ぶぞ!」


リヤカーに資材を山のように積み込み、護衛のおじさんが前に立つ。


「出発だ!」


道中、風が強くて進むのが大変だったけれど、兄たちと力を合わせてリヤカーを押した。


途中で会った人たちが「頑張ってください!」と声をかけてくれ、胸がじんわりと熱くなる。


◇◇◇


隣国の村に着くと、そこは見たこともない光景だった。


倒れた家、瓦礫の山、泣き疲れた子どもたち……胸がぎゅっと締めつけられた。


「こんなことに……。」


兄たちも言葉を失っている。


「大丈夫、ここからだよ。」


私は小さく呟き、両手をかざした。


「等価交換……壊れた家を新しい家に!」


光が走り、瓦礫が集まり、形を変えていく。


倒れた家は立ち上がり、壁は補強され、屋根が輝きを取り戻す。


次々と家が甦り、村人たちの顔が明るくなっていく。


「すごい……!」


「また住める!」


割れた家具やテーブルも次々に直し、壊れた井戸も新しいポンプに変えた。兄たちが一緒に運び、護衛のおじさんが見張りを続ける。作業の合間に子どもたちが私に花をくれ、「ありがとう!」と笑った。


◇◇◇


帰り道、夕焼けがリヤカーの荷台を照らす。


そこにはもう空っぽの資材箱だけが残っていたけれど、胸はいっぱいだった。


「……リサイクルショップでも、こうして人を助けられるんだね。」


兄たちが「次はどこを助ける?」と笑い、護衛のおじさんは「いい仕事をしたな」と満足げに頷いた。


ネセレ、5歳。リサイクルショップの枠を越えて、隣国の村を救った冬の出来事である。

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