「魔物が暴れているらしい……。」
そんな噂が王都から届いたのは、冷たい風が吹く日のことだった。
護衛のおじさんが険しい顔で伝えてくれる。
「隣国の村が襲われて、家々が壊れてるそうだ。」
「……危ないから、私たちが行くわけには……。」
母が心配そうに言うと、おじさんは首を横に振った。
「戦場には行かせねぇ。でも跡地の修復なら頼まれた。俺がついていく。」
「修復……?」
私は胸に手を当てて考えた。
お店を離れるのは不安だけれど、困っている人たちがいるなら――。
「……行こう!リサイクルショップだって、人を助けるためにあるんだから!」
◇◇◇
父が倉庫を開けてくれて、兄たちが力いっぱい資材を運び出す。
割れた木材、壊れた家具、残った瓦……
「これで足りるかな?」
「まだまだ運ぶぞ!」
リヤカーに資材を山のように積み込み、護衛のおじさんが前に立つ。
「出発だ!」
道中、風が強くて進むのが大変だったけれど、兄たちと力を合わせてリヤカーを押した。
途中で会った人たちが「頑張ってください!」と声をかけてくれ、胸がじんわりと熱くなる。
◇◇◇
隣国の村に着くと、そこは見たこともない光景だった。
倒れた家、瓦礫の山、泣き疲れた子どもたち……胸がぎゅっと締めつけられた。
「こんなことに……。」
兄たちも言葉を失っている。
「大丈夫、ここからだよ。」
私は小さく呟き、両手をかざした。
「等価交換……壊れた家を新しい家に!」
光が走り、瓦礫が集まり、形を変えていく。
倒れた家は立ち上がり、壁は補強され、屋根が輝きを取り戻す。
次々と家が甦り、村人たちの顔が明るくなっていく。
「すごい……!」
「また住める!」
割れた家具やテーブルも次々に直し、壊れた井戸も新しいポンプに変えた。兄たちが一緒に運び、護衛のおじさんが見張りを続ける。作業の合間に子どもたちが私に花をくれ、「ありがとう!」と笑った。
◇◇◇
帰り道、夕焼けがリヤカーの荷台を照らす。
そこにはもう空っぽの資材箱だけが残っていたけれど、胸はいっぱいだった。
「……リサイクルショップでも、こうして人を助けられるんだね。」
兄たちが「次はどこを助ける?」と笑い、護衛のおじさんは「いい仕事をしたな」と満足げに頷いた。
ネセレ、5歳。リサイクルショップの枠を越えて、隣国の村を救った冬の出来事である。