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第33話:皇帝様へ感謝のバッジ

隣国での修復作業からしばらくして、屋敷に立派な招待状が届いた。父が封を開けて読み上げる。


「ネセレ、隣国からのお礼の式典に招かれたぞ。」


「えっ、表彰されるの?」


「そうだ。あの村を救ったことで、皇帝様ご自身が感謝を伝えたいそうだ。」


兄たちがわくわくした顔で私を見て、「じゃあさ、皇帝様に何かプレゼントしようよ!」と言い出した。 「いいね、ネセレの作るものならきっと喜ばれる!」


私は少し考え、ふっと笑った。


「……じゃあ、感謝の気持ちをこめて、特別なバッジを作ろう!」


◇◇◇


作業台の上に、父が大事にとっておいた金と宝石を並べる。


赤、青、緑ときらめく宝石、やわらかい輝きを放つ金の塊。胸が高鳴る。


「等価交換……皇帝様への感謝のバッジに!」


光が走り、金が繊細な装飾へと変わっていく。


中央には王家の紋章をかたどったプレート、周囲には宝石が星のようにちりばめられている。


輝きは荘厳でありながらも優美、まさに唯一無二の逸品だった。


「……これなら、きっと喜んでくれるはず!」


◇◇◇


式典の日。


私と兄たちは新しい制服に身を包み、護衛のおじさんとともに隣国の広場へ向かった。


そこにはたくさんの人々が集まり、皇帝様が玉座の前に立って待っていた。


「このたびは、我が国を救ってくれたこと、誠に感謝する。」


皇帝様の声が響く。


私は緊張で手が震えそうだったけれど、勇気を出して歩み出た。


「……こちらこそ、助けてくれてありがとうと言ってくれたことが、すごく嬉しかったです。だから……これを、皇帝様に。」


私は両手でバッジを差し出した。宝石が陽光を受けて輝き、会場がざわめく。


「なんと美しい……!」


「皇帝様のためだけに作られたのだ!」


皇帝様はバッジを手に取り、しばらく見つめてからにっこりと微笑んだ。


「……素晴らしい。大切にしよう。」


会場から大きな拍手が起こり、兄たちは誇らしげに胸を張り、護衛のおじさんは静かに頷いた。


私は少し照れながらも、胸の奥から温かい気持ちがこみあげてくるのを感じた。


ネセレ、5歳。隣国の皇帝様へ、金と宝石をちりばめた感謝のバッジを贈り、人々の心に誇りと笑顔を届けた冬の出来事である。

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