隣国での式典を終えて、おじさんや兄たちと一緒に家に戻ると、遠くから人々のざわめきが聞こえてきた。お店の前まで来ると、そこには大勢のお客さんが集まっているではないか。
「どうしたのかな……?」
私が首をかしげると、母が心配そうに駆け寄ってきた。
「ネセレ!無事だったのね!」
「うん!ただいま!」
お店の前にいた人たちもほっとした顔になり、「隣国に行ったって聞いて、心配で……」「無事でよかった!」と口々に言ってくれる。
兄たちは胸を張って「ちゃんと元気だよ!」と声を揃え、護衛のおじさんは「ほらな、言った通り無事だったろ」と笑った。
「皆さん、心配かけてごめんなさい!私は元気です!」
私がそう言うと、人々は安心したように笑い合い、拍手が起こった。
◇◇◇
「せっかくだから、皆さんに新製品をお見せしようかな!」 私が言うと、兄たちが「おお、いいね!」と目を輝かせた。
「今回の新製品はね……魔物避けの匂袋!」
作業台にハーブや薬草を並べる。
ラベンダー、ローズマリー、特別な魔除けの葉……
「等価交換……魔物避けの匂袋に!」
光が走り、机の上に小さな袋がいくつも現れた。色とりどりの布で作られ、中には芳しい香りが詰められている。手のひらに乗せると、ほんのり温かい。
「これを身につけると、魔物が近寄らないんだよ!」
お店にいた人たちは目を丸くし、「ぜひ欲しい!」「子どもに持たせます!」と次々に注文をくれた。
兄たちは匂袋を渡しながら「安心ですよ!」と胸を張り、母は「これでまたみんなが守られるわね」と嬉しそうに笑った。
◇◇◇
「帰ってきてすぐだけど、やっぱり私はここが一番好きだな……。」
カウンターの奥で、私はたくさんの笑顔に囲まれながらそっと呟いた。
ネセレ、5歳。隣国からの帰還を報告し、魔物避けの匂袋でみんなの安心を守った冬の出来事である。