春の陽射しがやわらかく、家の前の通りを新しい制服の子どもたちが歩いていく。
兄たちも今日はその中にいた。
そう、今年で7歳になった兄たちも入学のシーズンを迎えたのだ。
「ネセレ、午前中はお店をお休みにしていいか?」
「もちろん!勉強は大事だからね!」
そうして午前中は兄たちと一緒に学校に通う。私はまだ入学は先だけれど、兄たちの隣で机に向かい、先生のお話を聞く。
「今日は算数の時間だぞ。」 兄たちは目を輝かせてノートを取る。計算問題を次々と解いていく兄たちの顔はとても誇らしげだ。
「おお、うちの兄ちゃん、他の子より計算が早い!」
「おみせやさんだからな!」
私はそんなやりとりを見ながら、胸がじんわりと温かくなった。
◇◇◇
午後、学校から帰ると同時にお店を開ける。
カウンターの向こうにはすでに何人かのお客さんが待っていた。
「いらっしゃいませ!」
その中に、小さな男の子が古いおもちゃを両手に抱えてやってきた。
「これね、もう飽きちゃったから、新しいおもちゃがほしいの。」
「そうなんだね、どんなのがいい?」
「なんか、頭を使うやつ!」
私は少し考えてから笑顔になった。
「じゃあ……知恵の輪はどう?」
◇◇◇
作業台に古いおもちゃを並べ、両手をかざす。
鉄の輪っかを思い浮かべて、外せそうで外せない、でも頑張れば外れるパズルのようなものをイメージする。
「等価交換……知恵の輪に!」
光が走り、机の上にいくつもの知恵の輪が現れた。
シンプルなものから複雑なものまで、手のひらに乗せると冷たく光る。
「わぁ!これ、どうやって外すの?」
「それは考えてごらん、できるかな?」
男の子はさっそく挑戦を始め、兄たちは「がんばれ!」「もう少しだ!」と応援する。
母は奥からお茶を持ってきて、護衛のおじさんは「いいもん作ったな」と笑った。
◇◇◇
午後のやさしい光のなか、お店の中には笑い声と小さな挑戦の気配が満ちていた。
ネセレ、6歳。学校とお店を両立しながら、午後には知恵の輪を届けた春の出来事である。