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第37話:午後からの開店と知恵の輪

春の陽射しがやわらかく、家の前の通りを新しい制服の子どもたちが歩いていく。


兄たちも今日はその中にいた。


そう、今年で7歳になった兄たちも入学のシーズンを迎えたのだ。


「ネセレ、午前中はお店をお休みにしていいか?」


「もちろん!勉強は大事だからね!」


そうして午前中は兄たちと一緒に学校に通う。私はまだ入学は先だけれど、兄たちの隣で机に向かい、先生のお話を聞く。


「今日は算数の時間だぞ。」 兄たちは目を輝かせてノートを取る。計算問題を次々と解いていく兄たちの顔はとても誇らしげだ。


「おお、うちの兄ちゃん、他の子より計算が早い!」


「おみせやさんだからな!」


私はそんなやりとりを見ながら、胸がじんわりと温かくなった。


◇◇◇


午後、学校から帰ると同時にお店を開ける。


カウンターの向こうにはすでに何人かのお客さんが待っていた。


「いらっしゃいませ!」


その中に、小さな男の子が古いおもちゃを両手に抱えてやってきた。


「これね、もう飽きちゃったから、新しいおもちゃがほしいの。」


「そうなんだね、どんなのがいい?」


「なんか、頭を使うやつ!」


私は少し考えてから笑顔になった。


「じゃあ……知恵の輪はどう?」


◇◇◇


作業台に古いおもちゃを並べ、両手をかざす。


鉄の輪っかを思い浮かべて、外せそうで外せない、でも頑張れば外れるパズルのようなものをイメージする。


「等価交換……知恵の輪に!」


光が走り、机の上にいくつもの知恵の輪が現れた。


シンプルなものから複雑なものまで、手のひらに乗せると冷たく光る。


「わぁ!これ、どうやって外すの?」


「それは考えてごらん、できるかな?」


男の子はさっそく挑戦を始め、兄たちは「がんばれ!」「もう少しだ!」と応援する。


母は奥からお茶を持ってきて、護衛のおじさんは「いいもん作ったな」と笑った。


◇◇◇


午後のやさしい光のなか、お店の中には笑い声と小さな挑戦の気配が満ちていた。


ネセレ、6歳。学校とお店を両立しながら、午後には知恵の輪を届けた春の出来事である。

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