学校に通いはじめて数日。
兄たちと一緒に教室へ入ると、私はふと周りを見渡した。
「……あれ?」
机の脚がぐらついていて、椅子の背もたれがひび割れている。
ノートは紙がやぶれてボロボロ、教壇の横にある人体模型は腕が取れかかっていた。
「先生、これ……いつからこうなんですか?」
「うむ……予算がなくてなかなか修理できなくてな。」
先生は困ったように笑う。
私は兄たちと顔を見合わせ、頷いた。
「……じゃあ、私が直すね!」
◇◇◇
授業が終わったあと、私は作業台を教室に広げ、壊れたノートや机、椅子を並べる。
兄たちも手伝って部品を集めてくれた。
「等価交換……新品のノートに!」
光が走り、破れていたページがつやつやの新しい紙に生まれ変わる。
ノートを手に取った生徒たちは「すごい!」「書きやすそう!」と歓声を上げた。
「等価交換……丈夫な机と椅子に!」
ひび割れていた椅子は頑丈で座りやすいものに、がたついていた机はしっかりとしたものに。
教室がどんどんきれいになっていく。
「人体模型も……等価交換!」 取れかかっていた腕が元通りになり、色も鮮やかに蘇った模型に先生が「おお、これは分かりやすい!」と目を丸くした。
◇◇◇
そのとき、先生が奥から重そうな黒板を持ってきた。表面は傷だらけで、書いてももう消えない状態だという。 「これも……直せるだろうか?」
私は黒板を見つめ、前世の記憶がふっとよみがえった。 「うん、黒板は黒板でも……ホワイトボードにしてみよう!」
「等価交換……ホワイトボードとペンに!」
光が走り、黒板が真っ白なボードに変わる。横にはカラフルなマーカーが並び、消しやすい専用のイレイサーもセットで現れた。
「おお……これはすごい!」先生が試しに文字を書き、簡単に消せることに感動の声を上げる。生徒たちも「わぁ、きれいに消える!」「絵も描ける!」と大はしゃぎ。
◇◇◇
新しいノート、新しい机と椅子、そしてホワイトボード。教室はまるで生まれ変わったように明るくなった。
「これで授業がもっと楽しくなるね!」 私はカウンターの代わりに教壇の前でにっこり笑い、兄たちも満足そうに頷いた。
ネセレ、6歳。学校を丸ごと修復し、未来の学びをホワイトボードとともに照らした春の出来事である。