昔はよくユウユウと一緒にお風呂に入っていた。ただ、私の胸がある程度大きくなっていくとユウユウは恥ずかしくなっちゃったようで一緒にお風呂に入ってくれなくなったんだよね。私はユウユウにならいつでも裸を見せてあげるのになぁ。それに私はユウユウともっと一緒にお風呂に入りたかった。
だから『プレゼンスバニッシュ』を開発したの。セラリスという存在をこの世から一時的に滅するだけの小技。もちろん死ぬってわけじゃないよ、人も動物も、無機物も、空気に至るまで私の存在が滅されたかのように認識できなくなるだけ。体温も体重もなく触れもしない。お風呂に入ってもお湯は溢れないし、ふとんに潜り込んでも暖かさが増すことはないの。
この力はユウユウとお風呂に入ったり一緒に寝たりするときくらいにしか使い道がないと思ってたけれどユウユウの旅にこっそりついて行くのにも使えそうだ。
そうしてユウユウがボルビール王国に向かう道中雑魚モンスターであるナナコミが大量に発生してきた。七本の線と腹部分だけで構成されているこいつは決して強いモンスターじゃない。ユウユウなら木刀でも十分にぶっ飛ばせるレベルである。
「うぉぉぉぉぉ俺は勇者なんだぁぁ!!!!!!」
ユウユウの初陣だ。しっかりとこの目に焼き付けないと!!
向かってくるナナコミたちをぶんぶんと木刀を振り回して撃退していく。棒を振り回す度に服から覗いてくる鍛え上げられた筋肉が堪らない……舐めちゃいたくなりそうだ。
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ、と敵を潰していく音が聞こえたが私の目はユウユウに釘付けだった。
と、そんな風にジックリ見ていたらいつの間にかユウユウが敵を殲滅していた。
「ふっ、まぁ俺にかかればナナコミくらいは一蹴よ……見ててくれセラリス、俺は世界を救うぜ」
キュンッ♡
ああんっ、ユウユウったらこんな時でも私に想いを馳せるなんてどれだけ私のこと好きなの??私もユウユウのこと好きだよ。愛してるよ。
私はユウユウの身体に抱き着いた。もちろんユウユウは気づいていない……ただ私はそれでも幸せだった。そして甲斐甲斐しい妻としてこっそり内助の功をしておく。
『ペインバニッシュ』
ダメージや疲労を滅する技である。これでユウユウは元気なまま王国に向かえるよね。
「ふっ全然疲れてないし、これまでの特訓の成果がでているな!!」
これからもいっぱいユウユウを応援するから早く結婚しようね、ユウユウ!!!
ユウユウは木刀を天に掲げて力いっぱい叫んだ。
「待ってろ世界!!俺が必ず救ってやるからな!!!!!」
頑張ってユウユウ!!私が誰より近くで見守っているからね!!
ん??
ちょっとした気配を感じた私はトコトコと歩いていく、すると屈強な肉体に槍を持ったモンスターがユウユウの下に向かおうとしているのを発見した。身体から魔力を迸らせ、歩いているだけなのに周りの木々がダメージを負っている。
たった今戦闘を終えたばかりだって言うのに面倒だなぁ。
仕方ない、内助の功、内助の功と。
プレゼンスバニッシュ解除
「どーも」
「貴様、どこから出てきた!!??」
「あっちからだよ。それより魔物さん、悪いんだけどここから先は通行禁止なんだ。回れ右してくれない?」
「貴様、村娘のくせに我の道を防ぐとは大した度胸だ。そうか、先ほど少し感じた正の気配を持つ者の仲間か……我はそいつを殺すために向かっているのだ。お前も殺して……いや」
魔物さんは私のことを上から下までジックリと見回した後にたりと厭らしく嗤う。
「なかなか美味そうだ……剥いで愉しんでやろう。このキングフーマーになぶられることを光栄に「あ、もうアウトだよ」あ?」
私は指をくいっとキングフーマーとかほざいた魔物さんに向けた。
「バニッシュメント・インパクト」
音もなく、私が指さした空間が滅された。当然、魔物さんの身体もだ。
「あっ………が??」
何が何だか分からないと言った様子でアワアワとしている。嫌なんだよなぁこれ、弱い者いじめだもん。だけど、ユウユウに捧げるこの身体を弄ぼうとしたんだもん、万死に値するよね。
「貴様………何者だ?」
この世界の生物には例外なく魔力が備わっている。戦うものは魔力を自らの身体に纏ったり、武具に纏わせる、もしくはそれを魔法として放出するのが通常だ。
だけど、私の『バニッシュ』は違う。魔力なんて欠片も使っていない。滅神の生まれ変わりとしての能力だ。私以外には観測も認識も出来ない。色もない、形もない、ただ滅されたという結果のみを受け入れるしかないのだ。
「恋する乙女だよ」
さぁーて、内助の功も果たしたことだし早く愛しのユウユウのところに戻ろっと♪