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第3話 勇者ってこう言うことするよね

 ボルビール王国はこのルルアルザーク大陸にある6王国の一つだ。他の王国に比べて特段大きいというわけではないが治安がよく、安定した国力を持っており魔族に大量に襲われたり、王国内に獅子身中の虫が出たこともない、平和と言う言葉が最も似合う王国である。


 ユウユウはボルビール国王様の前で雄々しく立っていた。国王様は50代くらいで、その両脇に王子様と王女様が控えている。


 にしても流石王宮だけあってかなり広いし、装飾品も立派だな。王国のシンボルである燕をあしらった壁の柄とかとっても素敵。どうせ魔王討伐したらその報告にまたここにくるんだし、私たちの結婚式はここで挙げてもらうってものいいかもしれないなぁ。


「よく来たな、貴殿が勇者の生まれ変わりユウユウであるか?」


「はいっ!!この身をささげてでも魔王討伐を果たしこの国…いえ、ルルアルザーク大陸の人々に笑顔をもたらして見せます!!!」


 長く蓄えたひげを威厳たっぷりに撫でまわしながら「ほっほっほっほっほ」と楽しそうに笑う。


「その意気やよし!!勇者とは世のため人の為自らの勇気で道を切り開いていくものなり、そちには勇者の資質が備わっておるようじゃ」


「感謝いたします!!」


「今夜はここで休め、三日後までに王国の武器と多少の資金を準備させるがゆえそれまでにそちはこの王国にいる猛者たちに声をかけパーティーのメンバーを集めておくのだ」


「かしこまりました。それでは本日はここで下がらせていただきます」


 ほぁん、ユウユウったら王様相手にも臆さず紳士的な行動しっかりできててカッコいい。普段のフランクで子供っぽいユウユウも素敵だけどこんな一面もキュンキュンきちゃう。



 ユウユウがいなくなった後王様は玉座に座り息をついた。


「ふふふ、立派な若者じゃ。彼ならば魔王を倒せるかもしれぬな」


 分かってるじゃない。流石は一国の王様なだけあるよ、見る目ある!!


「それで父上、ユウユウ殿には何を持たせるのですか?」


 王子様が恭しく言葉を出した。王様がひげを触りながら目線を空に向ける。


「そうじゃなぁ……まず国宝であるアイテムが無限に入る超次元バッグと……後は鉄の剣と白銅の盾を授けよう」


 はぁぁぁ????国宝は良いとして鉄の剣と白銅の盾?ふざけてんじゃないよ!!そんなもんよりもっともっと武器を与えるもんでしょう。世界を救う勇者様をなんだと思ってるの??


「ち、父上!!いくら何でもそんな武器では勇者様が可愛そうでございます」


 そうだよ、この老害ひげもじゃにもっと言ってやりなさい王子様!!


「そうはいってものぉ、これは伝統なのじゃ」


「で、伝統でございますか?」


「さよう……確かに強力な武具を与えるのは容易い……しかしそれでは肝心要の勇者自身の技量が上がらんだろう。力をつけ、技を身に着け、心を大きくさせる、成長した時にそれに応じた武具を手にすることこそ真の成長につながるのじゃ。ゆえに最初の武具はそれほど強くない物を渡すのだ」


「な……なるほど。そのような深いお考えがあったんですね」


 ふむふむなるほどなるほど……一理ある………一理あるが


 何言ってんだよこの現実を知らない老害は。そのご自慢のひげバニュッシュするぞ。


 この世をゲームか何かと勘違いしているの?その理屈は安全な環境で徐々に強くなれる国勤めの衛兵になら当てはまるかもしれないけれど、一戦一戦命を懸けて戦う勇者にはあってないでしょ。自分より遥かに強いモンスターにグサッとされたらそこで人生終了なんだぞこの老害。


「勇者を信じるのだ」


 あんたのおつむを疑え。


「父上、それは違いますよ」


 不意に凛々しい声がした。どうやら王女様が口を動かしたようだ。


「その理屈は武具の強さに溺れる愚者に当てはまる理論……真に勇者と認められたユウユウ様なら問題なく強力な武具を使いこなせるはず」


「イオリ…しかしこれは伝統なのだ」


「…しかし」


「分かってくれ」


「………分かりました………」


 王女様は納得のいかないと言った様子でその場から去っていった。それから自然と王様と王子様も解散していく……


 よし、それじゃあやるか。


 私は王宮内を練り歩いた。観光客気分でキョロキョロと辺りを見回す。


「ほぉほぉ、流石は王宮だけあって部屋がいっぱいあるしどこも立派なものだね。でも私とユウユウの新居にはなりそうにないかな?大きすぎて不便だよ」


 やっぱり一軒家だよね、ベタだけど丘の上あたり、広い庭で三人くらいの子供たちと微笑ましい生活を送るの……ああ、素敵。来るべき未来を想像するだけで涎が出てきちゃいそう………っと、ダメダメ。今はユウユウの為に内助の功をしないと。


 やがて私は目当ての場所……この王宮の宝物庫にやってきた。流石に幾重もの鍵がかかり、重そうな扉、何人もいる警備兵、まさしく厳重という相応しい防御が敷かれていたがプレゼンスバニュッシュを使っている間は誰にも認識されないし私の意志でものをすり抜けることが出来るのでそんなの関係なく中に入っていく。


「うっほぉ」


 キラキラと輝く金品に魔力のこもった宝石、心豊かになりそうな上品な調度品、そして当然のように見るだけで分かる強力な武具もおかれている。刀、やり、鞭、弓、ブーメラン、籠手……ああもう、沢山あってこまっちゃう。あのヒゲ王の奴、こんなにあるんだから勇者様に献上しろっての。


「さてと、ユウユウの為に強そうな武具をかっぱらっておこうっと」


 ユウユウが寝ている間に枕もとに置いておけばユウユウ驚くよね……うふふ、どんな反応するんだろう。世界を救う勇者様への貢ぎ物、満足してくれるものにしなきゃね。


 とはいえ王国に悪いから片っ端から奪うわけにもいかない。妻の目線でユウユウに相応しい武具を選別しなくちゃね。


よーし頑張るぞぉ。

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