目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第4話 おっぱいデッカ

 私の名前はセラリス、ケチな王様の冷遇に文句一つ言わない最愛の夫の代わりに勝手に王宮の宝物庫に侵入し、強い武具をかっぱらっておこうとしている村娘である。


 金銀財宝がそこらにあるのでその辺にいる村娘としてどうしても浮ついた気持ちが抑えられない。だが、私は真っすぐ目的の武具に向かった。


「やっぱり剣かな?ユウユウ木刀を昔から使ってたし……でも魔法使えないから遠距離攻撃の為に弓矢とかブーメランの方がいいかな?うーん、でも槍や鉾も捨てがたい……変わり種として鎖鎌とかも意外とユウユウにあってるかも」


 難しいなぁ……私武具にはあんまり詳しくないし……


 コツコツ


 静寂な空間に不意に足音が響いた。咄嗟に持っていた武具を直して足音が聞こえたほうに向かう。


「誰だろう?」


 そこにいたのは姫様だった。先ほど見た気品に満ちたドレスから着替えたのだろう、武道着に身を包み長い髪を赤いリボンでくくっている。


 姫様は籠手を装備した後サンドバッグに向き合った。


「ああもうっ!!アップデートが出来てないんですよ!!!」


 バンッ!!!


「伝統とか面倒くさいんですの!!!」


 バンバンッ!!!!!


「民を守るための最善手を常に打ち続けるのが王族の役目でしょうに!!!」


 バンバンバンバンッ!!!!!


「そもそもあのヒゲ似合ってないんですよ!!!!」


 バンバンバンバンバンッ!!!!!!


 魂の底から吐き出しているようなセリフと共にサンドバッグが可哀そうなほど殴りまくっている姫様を見て私は思った。


「溜まってるなぁ………姫様も大変だね」


 ちょっと親近感が湧いた村娘であった。


 にしても……


「ああもうっ!!!」


 バルンバルンッ


 でっか……ふわっとしたドレスだと分かんなかったけれど………でっか。何あれ殴るたんびにバルンバルンッってなってるよ。おっぱいバルンバルンッだよ。


「それに私も旅に出て魔王を倒したいのに、出してくれないですし!!!箱入り娘なんて今時流行らないんですよ!!!」


 バルンバルンッだぁ……凄いなぁ……女の私でも目が離せない…………


 コツンッ


 ん?


 何この緑の宝玉……私に……当たった??


 プレゼンスバニュッシュの発動中私は自分の意志以外でものに触れることがない。そして今はバルンバルンッに集中していたんだから何かに触ろうなんて少しも思っていなかったのに……


 不思議に思って宝玉を手に取ると私の中に記憶が吹き込まれていく………私のではない、滅神の記憶だ。


「ふーん…なるほどね」


 これはいい掘り出し物だね……そしておあつらえ向きにあそこにはバルンバルンッ……じゃなくて姫様がいる。


「そりゃ民を守るために鍛えているのは間違いないですよ、だけど攻撃こそ最大の守りって言葉もあるじゃないですか!!!王国兵の皆さんがいれば守りの力は十分じゃないですかね!!!」


 ふふふっ♪


 私は声だけプレゼンスバニュッシュを解除して宝玉を持ったまま姫様の後ろに回り込んだ。


「うお「イオリ姫よ」っ!!??」


 すごい勢いで振り向きながら声の発信源から距離を取った。


「ほ、宝玉が……浮かんでいる!!??どういうことですの?」


 威厳ある感じの声…威厳威厳………


「イオリ姫よ……我はボルビール王国の始祖、ボルビールなり」


「ボ、ボルビール様!!??」


「この宝玉にて時が来るまでの間、待っていたのだ………我の力を与えるに相応しい者が現れるのをな」


「それは一体……どういうことでしょうか?」


 よしよし、良い感じ良い感じ。


「先ほど勇者が来たであろう……そのものに我を与えるが良い、さすれば世界を安寧へと導く為に必要なものが現れるであろう」


「先ほどの……ユウユウ様ですか?」


「それでは頼んだぞ、イオリ姫よ」


 私は宝玉を床に転がした。姫様はただでさえ大きな目をさらに大きくさせて宝玉を凝視している。


「ボルビール様のお声……これは………」


 これでよし。


 別に嘘はついていない、記憶が私の中に入った時分かったのだ。あれは滅神の眷属であったボルビールの力が入った宝玉であると……眷属の力があったからこそ私に触れることが出来たのだろう。


 そして選ばれし者に力を与えることも分かっている……その選ばれし者が誰かは正直分からないんだけれど……ユウユウが選ばれし者じゃないわけがないよね!!


 さて、そろそろユウユウがお風呂に入る時間だし泊っている宿に行こっと。お嫁さんとして混浴しないといけないもんね。


 そして私はルンルン気分で宿に向かったのであった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?