翌朝、真聖たちは王国の指示で地下遺跡第三層の調査に向かった。
第三層は過去に封印されていたが、輪の影響で結界が弱まり、進入可能になったのだ。
通路は狭く、壁面には複雑な紋章がびっしりと刻まれていた。
拓己が小声で呟く。
「この彫刻……昨日の資料にあった門番装置の警告文だ」
真聖は足を止めて確認する。
「つまり、この先には何かが待っているということか」
やがて広間に出ると、そこには二階建ての建物ほどもある巨大な鎧が立っていた。
目の部分が赤く光り、低い駆動音が響く。
「自律鎧……?」つむぎが息をのむ。
俊介が短剣を構え、低く笑う。
「長続きしない俺でも、こういうのは燃えるな」
巨大鎧がゆっくりと動き出し、床を震わせた。
「来るぞ!」真聖が叫び、全員が散開する。
つむぎが先陣を切り、俊介が後詰めとして駆ける。
拓己は鎧の動きに目を凝らし、小さな違和感を見つけた。
「右膝の関節が甘い!」
その声に反応し、つむぎが跳躍して右脚を狙い、俊介が横合いから剣を叩き込む。
鎧が体勢を崩した瞬間、陽斗が冷静に攻撃指示を出す。
「全員、右側に集中しろ!」
連携の一撃が決まり、巨大鎧は轟音を立てて崩れ落ちた。
広間に静寂が戻ると、可奈子が息を弾ませて言った。
「やった……勢いで突っ込んだけど、なんとかなったね!」
崩れた巨大鎧の内部から、複雑な魔導機械のコアが転がり出た。
拓己がそれを拾い上げ、慎重に観察する。
「これ、ただの防衛装置じゃない。輪の制御システムとリンクしてる」
陽斗は頷き、周囲の壁面を確認した。
「この層そのものが、輪を守るための要塞だったのかもしれない」
つむぎは剣を納め、深呼吸をする。
「礼を尽くす戦いとはいえ、やっぱり疲れるわね」
俊介は肩をすくめて笑った。
「しつこく食い下がった甲斐があったな」
その時、可奈子がコアを指差した。
「ねえ、これって……動力がまだ残ってない?」
真聖が近づき、冷静に観察する。
「確かに微弱な信号がある。でも今は暴走していない」
貴子が静かに言葉を添えた。
「この鎧も、もしかしたら意思を持っていたのかも」
場に短い沈黙が落ちる。
だが真聖は首を振った。
「答えを出すのはまだ早い。今は前へ進むべきだ」
一行は巨大鎧を越えて奥へと進んだ。
そこにはさらなる階層へ続く階段があり、淡い光が下方から差し込んでいた。
未知への道が、また一つ開かれたのである。