ラークを採用することに決めた私はラークを連れて冒険者ギルドにきていた。
「彼を採用することにしたので契約金を支払にきました」
すると受付のお姉さんは嬉しそうに言った。
「よかったです!ラークさんのこと心配していたので…では採用費のお支払いをお願いします」
「ええ。これで」
私はきっちり20000ベリーを支払い、契約書にサインしてから店に戻った。
「じゃあ早速だけど明日からの仕事について教えるね。パン作りで一番大切で一番大変なのが生地をこねることなの。ここをしっかりしないと美味しいパンに仕上がらない」
「なるほど。そこを自分が担当すればいいのですね?」
ラークは真面目に答える。彼は元タンクなので力については心配していないが、こね方にもコツがいるのでまず練習をさせたいと思ったのだ。
「じゃあ試しにパンを作ってみましょうか。この材料をこねてくれる?」
私は生地の材料を大きなボウルに入れてラークの前に差し出した。
「では!」
ラークは張り切ってきじをコネ始める。
(おや?この人…)
すごく勘が良くて、特に指導しなくても丁寧にかつ器用にきじをこねていく。しかもさすが元タンクなだけあって力もあるので、大量の小麦を混ぜるのは重労働なのに難なくこなしてしまった。
「すごい!これだけできるのなら明日から早速生地を担当してもらおうかな。じゃあこのパンは疲労回復効果のある保存系のパンにするから貸してくれる?」
私はパンにエンチャントをかけるために捏ね上げられた生地を受け取ると手に意識を集中させて仕上げにこね始める。
(魔力を込めすぎないように…ちょっと疲労が回復する程度で)
魔力の調整は最近ようやくうまくいくようになって、このパンも無事完成した。
しばらく寝かせて発酵させたりして、焼き上げると、美味しそうな匂いに惹かれたのか、ラークのお腹が鳴った。
「ふふ。早速自分がこねたパン、食べてみる?」
「いいんですか?これは売り物では?」
控えめに心配されるが確かに売り物だけれど一個くらい試食しても問題などない。
「いいの、せっかくだから…ね?」
私はラークに焼きたてのパンを渡すとラークは大きな口でパクリとパンを食べてしまった。
「んん!?これは…なんだか体が軽くなりました。これが魔法の力なのですね」
今回のパンも成功だったらしい。ラークは肩を回したり足ぶみしたりして体の疲れが消えていることに驚いていた。