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第二十四話「イシヤマリサーチ株式会社[お買い物編]」

「1」


「まーくん。楓さん達が来てるわよ」

「今いくよ!」

 母親からまーくんと呼ばれた青年は散らばった漫画、ライトノベルを片付けて整理して玄関口まで向かった。

「こんにちは誠さん。これ、いつもヤギミルク配達してくれるお礼です」

 と、玄関先で待ってる制服姿の白粉肌少女八木楓とその三日月柄の和服を着込む同じく白粉肌の母親はお土産の紙袋から誠に手渡す。中身は石山県特産品高級果物サボテンフルーツだ。

 石山県では果物の高級品種改良が盛んだ。このサボテンフルーツは南米産で砂漠に実り、滅多にお見かけない幻の果物と言われてる。味はアロエのようなシャキシャキとした梨の風味の噛みごたえがあるらしい。

「ありがとう。いただくよ」

「後で感想をお願いしますね」

 誠は軽く頷いた後、楓達と世間話する。その話題で取り上げられたのは、誠の就職先だった。

「誠さんはたしか離職中でしたね。今はお父様のヤギミルク配達で手伝っているでしたね」

 母親が言うヤギミルクとは山羊の乳で絞ったミルクである。

 彼の父親はわずかだが山羊牧場を経営してる。

 ここでいつも美味しい山羊のミルクが八木家に運ばれている。

 楓は牛乳が苦手なのでいつもヤギミルクを毎日好んで飲んでる。

「そうだねー。僕の場合は体質だから、職場に行くと迷惑かかるから、なかなかいい職場がないんだよね」

 と、誠は掛けたメガネが曇ったのか、服の裾で拭き取る。

「それならば、私が贔屓して勤めてる職場を紹介できますよ」

 と、楓の母親がそう語ると、

「詳しく内容聞かせて欲しいです」

「株式会社イシヤマリサーチていう会社ですが、この会社の特徴はーー」

 楓の母親が語る詳細に誠は真剣に耳を傾けた。


「2」


 ーー「石山県野花市柿達町05時00分」ーー


「安良田!おい!起きてるか?」

 茶髪に染めかけた中年顎髭男性が社員寮の部屋のドアを何度もノックする。

 そこにノックで気づいたのか、パジャマ姿で応対する青年。

「……笠田さん。今日はまだ早いですよ。ふわぁ」

 青年安良田は気が抜けたあくびをする。

 笠田は深いため息を吐いて、

「おい!今日は買い物する予定だろ?」

 笠田の指摘に思わず安良田は目を見開き。

「す、すみません。今着替えて行きます」

「早くしろよ」と笠田は社員寮近くで停めた新型EVワゴン送迎車の運転席に乗り込む。

「あわわ。じ、時間がない。急がないと」

 安良田はパジャマを適当にベッドの上に投げ捨てして、いつもの普段着に着替えて送迎車に向かう。車内は運転席含めて8人乗りのワゴン車であり、どうやら安良田が最後だったのかすでに5人乗っていた。

「ご、ごめんみんな遅れてすみません」

 と、安良田は謝罪する。

「まぁ、気にすんなよ。こんな時間帯に遅刻は多々あることだし。ふわぁ」

 笠田のとなりの席に座ってる茶髪の長髪にバンダナ巻いた青年があくびした。

「そうね。小山さんも寝坊して遅れそうになったのよ」

「馬鹿!加奈守言うなよ!」とさりげなく軽く叱る。若い女性加奈守はクスクスと笑う。

 安良田はキョロキョロと周囲を見渡す。

「笠田さん。今日は和田鍋さん来てますか?」

 安良田は笠田に問いかけると、

「おう。

 安良田はクスと笑い。

「よろしくね」

 安良田は誰もいない隣の座席を見て言った。

「おまえら、今日の予定を言うぞ。まずコンビニのセブクロで買い物と朝食、次にパクパクパスタで昼食取ったら、その後永木アパレルショップ買い物、余裕があれば万年本で寄るが……誰かさんのせいで間に合わないかもな」

 と、みんなはクスクスと笑う。

「ちょ!?み、みんな。て、和田鍋さんも笑うことないしょ!」

 と、安良田は誰もいない隣の座席を再度見て叱る。

「じゃあ、そろそろ出発するぞ」

 笠田は停止した車をギア入れて走り出す。


 ーー「安良田の視点」ーー


 僕の名前は安良田悠人あらたゆうと

 25歳。

 僕がこの会社に入ったのは昨年の夏頃、僕は前に勤めていた会社で自分の体質により辞めざる終えなくなり、役所に届け出を出して体質障がい手帳をもらい、職業安定所からの紹介で僕はこの会社に入った。

 この会社では僕らのような体質を快く正社員に積極的登用してくれる。

 で、僕が叩き起こしてくれたこのメンバーを仕切るリーダー笠田知幸かせだともゆきさん。笠田さんも体質あり、今では会社の重役に勤めている頼れる兄貴分リーダーだ。

 笠田さんの隣の席に座っている茶髪ロングでバンダナ巻いてる方は小山哲希こやまてつきさん。彼も体質でまともに話すことが出来なかったけど、今はこの会社に入って体質と向き合ってる。将来はゲーム実況動画配信者になりたいそうだ。

 そして僕の前席で小説を読んでメガネをかけて黒の洋服が目立つ青年は六山聖ろくせんさとしさん。

 彼は体質になれてるがたまに酔って吐き気がするらしい。彼の両親も体質あるらしく、その体質の経験をもとに仕事してる立派な方である。両親の紹介でここに入ったらしい。で、吐き気するのに車で本を読んでるのは、気分を紛らすためらしい。あと車内で本を読んでも酔わない体質らしいのこと。

 六山さんの隣で座ってる若い女性は加奈守美穂かなかみみほさん。みんなのムードメーカー的な存在だ。彼女も幼少頃から長く体質によって苦しめられた。ほとんど外から一歩も出歩けなかったそうだ。で、この会社に入ったばかりでも誰も口を聞かず部屋を塞ぎこんでいた。そんなある日、座談会で彼女と同じ体質を抱える方と話す機会があって、少しずつ加奈守さんも元気を取り戻した。今では誰でも気軽に会話してくれる。でも外に出るのは少し怖いらしい。加奈守さんは絵を描くのが好きなので将来漫画家になるため勉強してる。僕の似顔絵描いてくれたけど絵は上手かった。

 最後に僕の隣で座ってるのが和田鍋辰也わだなべたつやさん。僕はかすかな気配はするけど笠田さんと加奈守さんはバッチリ見えるらしい。で、たまにほとんど来ないので幽霊社員て揶揄されてからかわれている。自分も幽霊社員だぞ!と自虐ネタで笑いを取ってる。

「あ、また手垢だ」

 僕はハンカチを取り出して窓ガラスの手垢を拭く。そして車内に用意してあるスプレーで消毒する。

 (パチッ)

 車内にラップ音が鳴った。

「あ、ごめん。かかった?」

 僕は和田鍋さんに謝る。

「ほんのちょっとだから気にしないでと彼は言ってるみたいよ」

 加奈守さんがフォローしてくれた。

「大丈夫ならいいよ」

 と、僕はスプレーを元にあったところを戻す。

「おまえら、もうすぐ着くぞ。今日は和田鍋も来てるから、加奈守いつものように彼の代わりに買い物頼むぞ。和田鍋わかってると思うが会社から物品支給は2000円だから、それ以上は実費だからな」

 (パチッ!)

 どうやら了解の合図らしい。

 しばらく運転すると目的地についた。



「3」


 送迎車を店の駐車場の片隅に停めると、和田鍋さん以外僕たちは店の前に出た。

 そして、笠田さんは店にあるお札の張り紙を外してライターで燃やした。そして店の前で設置してあるペットボトルの水と酒を撒いた。

「こんなもんだろ。あと、そこの店の前に蛇口でうがいと手洗い忘れるなよ?感染予防対策だからな」

 最近、この町では感染予防に力を入れてる。なので僕たちは念入りに消毒した。

「これを舐めておけよ」

 笠田さんは僕らに塩を配ってひと掴み舐めると店内に入った。

 店内に入ると笠田さんは店の灯りをつけた。

 僕たちはいつものように清掃用具を取り出して軽く清掃する。

「あ、ここにも手垢だ」

 僕は手垢ついてるガラスを念入りに拭き取る。

 ここのコンビニチェーンはうちの会社が運営してる。僕たちが店を1番乗りする代わりに朝の清掃業務してる。

 (パチパチ)

 店内にラップ音が鳴ってる。どうやら早く来たみたいだ。僕たちは清掃を急ぐ。

「よし!こんなもんだろ。じゃあ買い物開始するぞ」

 と、僕たちは清掃用具を片付けた。



 僕たちは清掃終わると買い物籠を取り出して欲しい物を買いあさった。会社から支給2000円額をついついオーバーしてしまう。

「あ、塩ポテチ入りコーラ、これも買っておこう」

 僕たちが買い物する場所は新商品や開発中の商品が置かれてる。

 この会社は僕たちが石山県にある商品をアンケートリサーチして商品の改善点を提案などする会社だ。

 実際に商品を試しに購入したり、消費等してアンケートもする。

 この前は天ぷらバーガーをアンケートリサーチをして出した。開発した会社は僕のアンケートの意見などを取り入れて今は石山県の市場に流れている。

 僕はポケットからメモを取り出して、目を惹かれた塩ポテチ入りコーラを忘れずにチェックしとく。

 僕がレジに向かうと、加奈守さんが自分で商品のレジを打っている。ここの店は完全無人レジでを慣れれば大丈夫である。

 そして会社から支給される専用クレジットカードで支払う。カードに描かれてる可愛いうさぎの絵柄は加奈守さんが描いた物。もちろんイラストデザイン費用は会社から加奈守さんに支払われる。

 そして僕たちは買い物終えると店に出た。

「あ、もうお客さんが来た」

 僕たちが店から出た後、お客さんも僕たちと同じように感染予防対策して店に入る。

 会社のコンビニチェーン店だが結構珍しい商品目当てでかなり人が来店する。

 僕たちは送迎車に乗って次の目的地に向かった。


 ーー「車内」ーー


 僕たちは朝の軽食を取った。

 みんなはバリエーションあるバーガーやサンドイッチを食べてる。

「笠田さん。コーラ飲んでいいですか?」

「好きにしろ。ただし車の中絶対汚すなよ」

 僕は買った塩ポテチ入りコーラを飲んだ。

 (ん?これは新しい!!結構癖になる味だ。これも後でアンケートを丁寧に書こう)

 加奈守さんと六山さんも買った飲み物を飲んだ。

 加奈守さんはイチゴコーラ。

 六山さんは砂糖なしのブラックココアだ。

 小山さんと笠田さんはそこまで喉が乾いてないので会社の支給されたお茶を飲んでる。

 和田鍋さんは以前紙パックの梨のジュースを飲んで車内をこぼしたため無しになってる。

「笠田さん。今何時ですか?」

 六山さんが時間を気にした。

 と、笠田さんは自分が身につけてる腕時計を見た。もちろんこの腕時計も会社からの試作品でアンケートリサーチ対象の商品だ。

「今は……10:38だな。予定外時間オーバーだな。本屋か服屋どちらかひとつ諦めるしかないな。おまえらどっちにする?」

 笠田さんの提案に、

「わたしは服を見たいな」

「俺も」

 (パチパチ)

 和田鍋さんも服屋らしい。

「じゃあ僕も服にしよう。今回は本屋を諦めることにするよ」

 と、多数決によりほぼ服屋で決まった。

「ごめん!六山さん。僕のせいで」

「安良田君が気にすることないよ。この前、たくさん本買ったし。丁度服屋みたいしさ」

 六山さんは気にすることないと言われた。

「おまえらそろそろ着くぞ!和田鍋も準備しとけ」

 (パチパチ)

 僕たちはパクパクパスタフードに着いた。


「4」


 ーー「ファーストフード店パクパクパスタフード11時45分」ーー


 僕たちが店に着くとすでに店内の客はかなり埋まっていた。ここでは和田鍋さんもこの店に入れる。そして僕たちは感染予防対策して、和田鍋さんは別のオープンドアから入った。

 このファーストフード店の特徴はさまざまなパスタが食べられること。

 好きな組み合わせのパスタ麺、種類やソース具材が盛りつけできる。

 僕はこの店の売りであるデザートパスタを注文する。中身は焼きチーズクリームたっぷり載せた物。

 加奈守さんと六山さんもデザートパスタでヨーグルトソースをかけた彩りのフルーツ載せたパスタ。

 笠田さんはカレーパスタ。

 小山さんと和田鍋さんはガッツリ系で小山さんは回鍋肉パスタ、和田鍋さんはニラレバパスタを注文した。

 しばらく食事すると和田鍋さんが完食したのでみんなで和田鍋さんの残ったパスタをみんなで分け合って食べた。

「食事終わったら、すぐ永木アパレルショップに向かうぞ。しっかりと車で休憩するようにな」

 僕たちは了解の返事をした。


 ーー「パクパクパスタフード駐車場」ーー


「あ、車に手垢がついてる。しかもかなりだな」

 僕たちは送迎車に戻ると手垢が周りのボディにたくさんついてた。

「安良田、車内にあるタオル取り出してくれ。あと例のスプレーもな」

 僕は承諾すると車内から例の物出して笠田さんは手垢を落とした。



 僕たちは永木アパレルショップに着いた。

 笠田さんは駐車場を停めようとするが車の調子悪いらしい。なんでも重いとか?まぁ、いつものことだけど。

 この店は永木財閥グループが経営するアパレルショップ店で新人デザイナーや専門学校のデザインした服を売っている。もちろんプロもデザインした服も売られてる。

 僕は店をいろいろじっくり見回るとひとつの服に注目した。背景に黒の蝶柄びっしりデザインした白のポロシャツがあった。試しに試着すると加奈守さんは似合うと言われて僕は購入した。加奈守さんは野花をデザインした花柄のフリルワンピースを購入した。

「うん。似合ってるよ」と加奈守さんは喜んでた。

 さて、僕は忘れずにアンケートのメモをした。


 僕たちは買い物から駐車場に戻るとあっと驚いた。

 その時小山さんが言った。

「これもまた、見事な手形なんなかな?和田鍋に釣られてきたのか?」

 (パチパチ)

 和田鍋さんはすまないと謝罪した。



 僕たちの送迎車にくっきりと巨人がつけたような大きな赤い手垢が屋根のボディについていた。


 ーー「明月誠の自宅」ーー


「へー。そんな会社あるんだ。僕も行けそうだな。考えておくよ」

「焦らずゆっくりとご検討ください」

 と、楓は何かに気づく。

「あら?今日はお兄さまも来てるみたいですね」

 と、廊下の壁にいたるところに赤い手垢がびっしりついてた。

「そうなんだよ。兄貴も俺のこと心配してこっちに居座るみたいなんだ。まぁ、ありがた迷惑なんだけどな。ははは」

でいい方じゃないですか?」

「そうだねー」

 楓たちはクスクスと笑っていたが楓の母親は恐怖のあまり立ったまま気絶していた。彼女は昔から怖いのがダメだったから。


 ーー「社員寮浴室内」ーー


 安良田はゆっくりとお風呂に浸かろうと着替えると身体に違和感がつく。

「あ、手垢だ。こっちにもついてる。湿布変えないと」

 安良田の背中には手垢の痕がびっしりとついていた。


 イシヤマリサーチ株式会社[お買い物編] 完

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