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第6話  告白の夜

その夜、美香は夕食後のテーブルに家族を集めた。

健一は新聞をたたみ、結衣は「何? テレビ見たいんだけど」と不満そうな顔をして椅子に座る。


「……二人に話があるの」


声を出すと、自分の声がわずかに震えているのがわかった。

深呼吸を一つ。健一と視線が合う。彼は何かを察したのか、真剣な表情に変わった。


「実は……私、赤ちゃんができたの」


沈黙が落ちた。時計の秒針の音がやけに大きく響く。

先に口を開いたのは健一だった。

「……本当か?」

美香はうなずく。

「先週、病院でわかったの。三か月目に入ったところ」


健一は驚きと戸惑いの入り混じった表情を浮かべ、やがて小さく笑った。

「エコー写真、見せてもらえないか?…すごいな」

声にはどこか嬉しさがにじんでいた。


だが、結衣は椅子をがたんと鳴らして立ち上がった。

「は? 今さら赤ちゃん? 私、大学受験なんだけど! 友達にどう説明すればいいの? もう恥ずかしい!」


「結衣……」

美香は娘をなだめようとするが、結衣は涙をこらえながら自室に駆け込んだ。

閉まるドアの音が、胸の奥に鋭く突き刺さる。


リビングに残った二人。

健一はため息をつき、美香の肩に手を置いた。

「……大丈夫だよ。あいつも時間が経てば受け入れる」

その声に励まされながらも、美香の胸の奥には、娘との距離が広がったような痛みがじんわりと広がっていた。


お腹にそっと手を当てる。

その中にいる小さな命の鼓動が、今夜はひどく心細く感じられた。


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