「一つ屋根の下に住んでいる義理の妹が告白って状況に義兄さんは萌えない?」
ソファーに座っていた俺を逃がさないように、彼女は両肩を抑えていた。
親の再婚により義妹が増え3カ月程。
何の心境の変化か義妹が俺の事を好きだと抜かす。
「スミ。
俺を困らせるのは辞めてくれ」
「ヤダ。それにこれでも結構気を使ってるんだよ。
ずっと私を待たせているお兄ちゃんが悪い」
好いてくれるのは損得なしに嬉しい。
それにスミは美人でありながら外見に奢らず思慮深い良い性格をしている。
「俺たちは兄妹だ」
「血が繋がってないから大丈夫だよ」
「母さんたちが良いと言わない」
「二人とも穏便に済ませるなら良いって言ってくれたよ」
「…は?」
「穏便に済ませるなら良いって」
「…聴いたのか?」
「うん。
お兄ちゃんがなかなか首を縦に振ってくれないからお母さんに相談した」
「嘘ぉ…」
こういうのって親に秘密にするものだと思いきやまさかの既に親が説得済みと…
俺は慌てて話を変える。
「良いか悪いかと言うのは置いといて俺はスミと付き合う気はない」
「それは家族関係が悪くなるから?」
「あぁ、そうだとも」
「なら後腐れが無ければいいんだね」
「---」
「分かった。
私が高校生になったらバイトして一人暮らしする」
思わず考えてしまい返答が遅れた。
「いや、妹にそんなことさせられるか!ってかまず結婚しねぇよ!」
「あらら、ちょっと間があったね」
「そりゃお前は可愛いし良い奴だと思うけどそれとこれとは話が別だ。
それに自分に責任を取れる能力が無いのに遊びじゃない恋愛は出来ない」
「私の事かなり真剣に考えてくれてるの?」
「いや、気軽に―――」
いや、辞めた。
スミはかなり本気で外堀を埋めに来ている。
ならばわかりやすい理由で拒絶するのではなく本心をぶつける他無い。
「スミ。
俺はお前と気軽に付き合えないし今の状態で結婚を見据えた動きは出来ない。
スミの気持ちは嬉しいがそれ以上に家族としての関係が崩れるのが嫌だ」
スミの目で瞳孔が開くのが分かった。
「…なるほど。
でもその感じだと私の事は魅力的に思ってくれているという事?」
「そりゃもちろん」
「…分かった。
なら私が高校生を卒業するまでに義兄さんに彼女が出来なかったら結婚前提に付き合って。
一人暮らしの逃げ切りとかはなしで」
「分かった」
「約束」
「約束」
子供みたいに互いに小指を絡ませた。
彼女は話の内容に満足したのかあっさりと俺から離れロビーを出ようとしたが足を止めて振り返った。
「あ、そうだ義兄さん」
「なんだ?」
「別に彼女扱いはしなくていいけど兄妹らしくしてくれなかったら拗ねるからね。
それと彼女は作っても良いけど私を放っておいたら彼女さんに何するか知らないよ」
好き放題言って彼女は部屋を出て行く。
緊張の糸が切れ、俺はソファーにのめりこんだ。
利口な義妹の扱いにこれからより一層の注意を払わなければいけないらしい。
これでは迂闊に恋愛も出来なさそうだ。