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第二章 すれ違う勇者たち

11 監獄の塔からの脱出

 僕と森久保先輩は、異世界転移した。


 性別が反転させられた状態で異世界に転移召喚された。僕は、男子から女子へ、森久保先輩は女子から男子へ。


 ボクは召喚元のミヨイ王国教会の大聖堂に召喚された。


 だがモリクボ先輩は召喚座標に狂いが生じた為、隣国のアタランテ帝国の辺境の港町に出現することとなった。一ヶ月前ことである。


 ボクはモリクボ先輩と再会する為に、教会の聖女アリシアさんと共に帝国に向かった。


 だが旅の途中、国境の町「カドマチ」にて帝国の騎士団に捕らえられてしまう。


 その後高速馬車で帝都に連行され、城壁の塔に監禁されることになった。


   *


 監禁され絶望している中、突如出現した魔族の使い魔ベルンハルトとの半ば強引な契約により、ボクは日本の正統派魔法少女シノちゃんとなる。


「アリシアさんを探さなきゃ!」


 彼女が心配だ。警備兵どもにどんな酷い目に合わされているか分からない。


 ベルンハルトが言うには——


 ここ帝都の城壁には四つの方角にそれぞれ塔がある。そして塔のてっぺんには牢獄がある。ここはそのうちの一つ。


 他三つのうちのどこかにアリシアさんは監禁されているだろう。


 牢獄に通じる通路は塔内の螺旋階段のみ。地上からと城壁の上部から塔の内部に入れる構造。


 ここ帝都は、アタランテ帝国の首都なだけあって、結構広い。中央広場まで普通に歩いて三〇分はかかる距離がある。


 騒ぎを大きくして、警備隊や帝国騎士団に警戒されてはアリシアさんが危険だということで、目立たぬように探索をすることにした。


「一旦地上に降りてから探りを入れよう」

「うん」

 帝都に何故か詳しいベルンハルトに促されて、牢獄から脱出することにした。




 ガチャ——


 扉に鍵がかかっていない。いくら両手を鎖で繋いでいたとはいえ、不用心じゃないか?


 あたりを見回してみたが見張りの兵もいないようだ。まあいい。螺旋階段がある。ここを降りていけば外に出られる……。


 外側の壁に、人が通り抜けるには無理な小さな穴が空いていて月明かりが塔内をほんのり青白い光で染めていた。


 さすがに出口には見張りがいるだろう……と静かに、そして慎重に螺旋階段を降りていく。




 螺旋階段の途中、城壁の上部出口が見えてきた——


「……あれ? ここにも見張りがいない、だと?」

 あたりを見回してみたが誰もいない。


「うーん、おかしいな。いくらなんでも静かすぎる」

 ベルンハルトが、口元に手をあてて怪しみながら言った。



          —— つづく

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