中央広場から南地区の塔へ向かう街路を走った。こちらも小一時間程走ったところで南側の城壁と塔が見えてきた。
ボクの監禁されていた西の塔と違い、こちらは警戒が厳重だ。塔の入口には見張りが四人いる。しかも居眠りをしていなく、警戒が厳重だ。
「よし! シノちゃん。今度はシノちゃんが魔法で見張りをなんとかしよう」
「ええっ? ファイヤーボールで焼くの? 人間を焼くのはさすがに抵抗があるなあ」
「違う違う。魔法少女の力を試すのにいい機会だからさ。練習で見張りを黙らせよう」
「――わかった。で、どんな魔法が使えるのか教えてくれるんでしょ?」
「いや、僕はあくまできっかけを与えるだけなので自分で考えて」
「なんだか適当だなぁ。そんな事を言われても、解る訳ないじゃない」
「簡単だよ。君が『こうしたい』と思うだけで、それにふさわしい魔法がそのステッキから発動するから。ただし……」
「ただし?」
「あまり無茶なことは考えちゃダメだよ? 君の力は未知数。加減を間違えたら、聖女ごと塔を吹き飛ばしかねないんだ」
「怖い怖い」
「じゃ、行くよ」
そういうとベルンハルトはフワフワと塔の入口に向かった。ボクはその後を静かに歩いてついていった。
*
「何者だっ!」
「そのツノ……魔族かッ!?」
また魔族と言われてしまった。もしかしてベルンハルトととの契約ってかなりまずいことになっているのでは。
「さぁ、シノちゃん! 魔法魔法!」
「うん!」
魔法のステッキを手前かざし、魔法……を、考える。
んな、馬鹿な。なにか呪文はないのかな。とりあえず……。
「えいっ! 見張りの警備兵、ここを通して!」
魔法のステッキを見張りに向かって振りかざす。すると、赤紫……いや、ピンク色!? の怪しげな霧がステッキからモワッと出て、見張りの男に絡みついた。
「こ、これは……んふ?」
「はぁん、はぁはぁ、はぁ……」
すると見張りの警備兵たちの目がとろんとして、息が荒くなってきた。なんだかボクを見る目が怪しい。
「うおぉぉぉぉ」
「きゃっ!」
見張りの一人が、ボクに襲いかかってきた。 ボクの肩を強く掴んで壁に押し付けてきた。痛い痛い。
「はぁはぁはぁ……」
その見張りの男は、膝をボクの股間に押し付けて、更にグリグリしてきた……。執拗にグリグリしてくる。
「あっ……」
なんだか気持ち悪い感覚が下半身に走った。初めての感覚。これは女の子の……。
男は、その顔を、ボクの顔に近づけてきた。
手で力いっぱい警備兵の男の顔を押しのけようとするも、すごい力でぐいぐい来る。
「いやぁぁぁぁん、臭い気持ち悪いぃぃぃぃ」
魔法のステッキに向かってピンクと赤紫の光の細かい粒が集まりだした。
――チュン!
ステッキに集まった怪しい光が、警備兵たちの股間めがけて飛んでいった。光は四つに分かれて警備兵四人の股間に直撃。
「おほぉぉぉぉ!」
「んほぉぉぉぉ!」
「ヴっ!!」
「ああああああ!」
警備兵四人は、膝がガクガクしてその場に崩れた。失禁したようだ。地面がびしょびしょになり、あたりに強い尿臭が漂い始めた。
「いやぁぁぁぁん、なんでおもらししているのぉぉぉ」
「シノちゃんやるねえ。これは淫夢魔法だね。これは強い」
ああああ、なんて気持ち悪い魔法を……。
「敵を殺さずにゴートゥーヘブンするとは、シノちゃんやっさしぃ」
「やめて」
相手に怪我をさせたくない。殺したくない。そんな風に考えながら魔法を発動させたせいだろか。男を刺激して倒すだなんて、魔法少女にあるまじき所業。
と、いうよりもしかして魔法少女でなく、魔族少女? しかも淫魔系……。
「さあシノちゃん! 急いで聖女の元へ! こいつらやばいぞ。警備兵の男ども、みんな助平だ。聖女が危ない」
「は?」
―― つづく