ギルドに冒険者登録をするために、クボちゃん(剣聖モリクボ)のステータスを確認することになった。
「こ、これはすごい。さすが転生召喚勇者さまですね!」
計測用水晶を確認した受付嬢のアリサは驚きを隠せない。
クボちゃんのレベルはマックスの99、クラスは最高クラスのトリプルエスの剣聖であることが確認される。
ギルド内は騒然。
「いやぁぁぁぁん、あたしそんなにすごいのぉぉ?」
ギルドで次の旅の行程スケジュールを提出して、王都東地区の大聖堂に向かった。
アリシアさんがボクの健康状態を心配して、ステータス確認をしてくれた。また素っ裸になってベッドに横になった。
もう何度もやっているのでアリシアさんに身体を見られるのは慣れたものだが、股間を凝視する視線だけはまだ恥ずかしい。
「HPが以前より確実に短くなっていますね。このままだと四ヶ月後にはHP上限がゼロになってしまいます」
「そ、そんな……」
「レベルアップする時にHP上限がアップするはずなのですが……はっ!? そういえばシノヤマさん、あなたレベルアップをしてないですよね?」
「レベル……アップ? それってどうやればいいんですか?」
「魔法で攻撃や回復をすると経験値が蓄積されます。そしてある程度の経験値に到達するとレベルがあがります。
それと同時にステータスのHPやMPの上限があがり、フルに回復します。通常はそうなるはずなのですが……シノヤマさん、全然レベルが上がってないですね。レベル1のままね。
……それでもレベル10程度分の経験値はあるのですが。
なにかの呪いがかかっているのか、状態異常でレベルアップが阻害されているのか……いまの王国教会の魔法科学の限界です。原因の特定が出来ない」
「するとやはり、古代魔法科学の知識を……」
「そうね、森久保さんのこともありますし、一刻も早くゴンドーラ遺跡に行って調査をしたいところですね」
今日は、センターギルドの宿泊施設に戻り、明日からの旅の支度を整えた。今度は大人数になるので、携帯食料や服、回復ポーションなど必要最低限のものは揃える必要があった。
翌朝、今回の旅では馬車を利用することにした。六人乗りの王国標準の軽ワゴンだ。馬は二頭で、キャビンを一頭で引かせ、もう一頭は、乗馬して馬車に付いていくという方式を取った。これだと馬を交代で休ませながら進めるので効率がいい。
御者には聖女アリシアさんが、乗馬は聖女レベッカさんが担当した。二人とも聖女でありながら、この異世界での生活が長いので、馬などの扱いもうまい。
うん、レベッカさんサマになっててかっこいいなぁ。
「あたし馬車は苦手だなあ。なんだか妙にゆったりと上下に揺れるのが気持ち悪くって……」
クボちゃん、車酔いならぬ馬車酔いかぁ。
王都を出て西の街道を進むとすぐに深い森がある。ここをしばらく馬車で進む。
一日目は宿のあるところまでたどり着けなかったので、途中少し開けた場所に小川もあったので野営した。
焚き火をして見張りを一人つけて魔物に警戒しつつ、テントで横になって休んだ。見張りには少年執事姿のベルンハルトが担当した。彼は使い魔なので睡眠を必要としていないのが幸いだ。
テントは、アリシアさんとレベッカさんのテント。ボクとクボちゃんのテントに分かれた。もうこの組み合わせが定番になった感。
二日目、日中は特に魔物の襲来もなく、また馬車の呼称もなく、夕方まで順調に進めた。
そろそろ休憩のための野営をと思っていた頃、旅の宿とギルド支部、そして商店があるだけの小さな集落が森の中にあった。ちょうどよい場所にこのような施設があるのは、馬車の速度などを考慮した設計なのだろう。
ギルド支部の横には、馬小屋があり、馬車を引く馬を交代できる駅馬車制度も整備されているようだ。
ギルド支部、併設している旅籠、そしてちょっとした商店では武器や防具なども購入が出来る。なんというか日本の田舎のドライブイン的な佇まい。
そしてなんと「コンビニ」まであった! は? なんでこんなところにコンビニが? しかもカタカナで「イセカイマート」と書かれた看板がある。
電気はないものの、その店の佇まいといい商品の品揃えといいどう見てもコンビニだった。ここ以外にも森の中支店が四か所あるらしい。驚きだ。
ここは王都に最も近い「森の東一号店」という。
大体どこの支店も、宿とギルド支部と宿がある場所に併設をしているのでちょっとした集落の機能を持っているらしい。
またギルド支部は王国内の高速連絡網の役割も果たしていて、飛脚のような商売もあり、高速乗り継ぎ馬車などもある。
これ絶対、勇者にならなかった転移召喚された元日本人が作ったでしょ。
ここはまだ森の街道の三分の一の行程。先はまだ長い。このあと草原地帯、砂漠を越えるとオアシスがある。そこに今回の目的の地、古代魔法技術王国ゴンドーラ遺跡がある。
――魔法使い勇者シノヤマの余命はあと四ヶ月弱。
―― つづく