ー①ー
「グォォォォォォォン!!!!!」
巨体な身体を持つ木族の長の咆哮が彼らの耳元に聴こえる。
その紅く光る眼は彼らシャンペトル一行を見下してるかのようだ。
雨はさらに強くなり、土砂降りになる。
この冷たい雨が彼らの試練を与えるような物だった。
「……ふ」
ロランは雨しぶきに顔を手を被せて巨体のそいつを眺めている。
ーーと、ファーネが主人の命令を無視して駆けて木族の長に斬り刻もうとするが、
ガキン!と弾く音。
木族の長は軽く虫を追い払うかのように手を払って彼女は身を回転して着地する。
「……どうだった?」
主人の命令違反は許すまじな行為だが、あえてロランは強い相手には試し斬り自由であることは黙認している。
「ダメだょおおおううう!!この
と、ファーネの
この曲月刀はかなりそこそこ業物ではあるが並大抵で奴に斬れないことはたしかであろう。
「……あーあ。かなり値がしたんだがな。しゃーねな。あいつを倒して依頼料金ふっかけよう」
ロランはコートの懐に瓶詰めした青の液体をコルクを抜いて飲み干す。
この液体はとある植物の果実から潰した薬であり、疲労回復や魔力回復効果を得られる。
ただ、ロランの場合は長い戦闘で喉が渇いていたこともあるが……。
ロランは飲み干した瓶をどこか捨てた後、ロランは皆に告げる。
「……こいつはとてもじゃないけど太刀打ちできない」
と、ロランはランスガンを軽く構えて木族の長にいくつか撃った。
放たれた弾丸はそいつに当たり軽く白い煙を出して消えた。
そいつはかすりもせず無傷である。
「と、このようにあの
そのロランの提案にシャンペトル達は乗る事にした。
ー②ー
「むだむだ。そんな並の大抵武器じゃ効かないよ」
木族の長の背後に立ってるホープ。
彼はまたあくびをする。
彼はいろいろと徹夜して言呪作成などこなしてるのでいつも寝不足である。
彼はこの奥の手を出せば大抵あきらめて退却してくれるだろうと踏んでいた。
……しかし、彼らは退却する所か立ち向かってやってきた。
ホープを集中的狙いを定めに。
ー③ー
「!?」
ホープの前に一気に駆けてくるファーネ。
そこにナイフを構えて所持してホープの頭をめがけて刺そうとするが、彼は寸前なところで護衛ついてる木族である1人になんとかかろうじて防ぐことができた。
そのファーネは木族達の猛攻に身をかわしていく。
シャンペトル達とホープ達の集団混戦となる。
シャンペトル達はどうやら、木族の長を倒すのは後回しするみたいだ。
たしかに理は叶っている。
ホープを倒せば
しかしシャンペトル達は知ってるか知らずか木族達はホープに操られている。
木族達全てにネールの能力催眠術で洗脳されている。
もし、ホープを倒せば彼ら木族達は解放される。
しかし、この木族達は人間たちに強い恨みを持ってる者達で構成されている。
催眠術解けばますます人間に危害を加えるかもしれない。
そんないきさつを知らないシャンペトル達に事情説明しても受け入れてもらえないだろうと。
国を起こして支配したり、他の村達を攻めてこようとする魔剣者の村や木族達の村を滅ぼしたのはそのためである。
そう、木族達を支配してるのはそんな彼らみたいな人達を守るために必要なんだとーー。
そんな彼の歪んだ正義の心の持ち主にシャンペトル達には届かない。
そしてホープもそんな相受れない正義のために戦いを始める。
ー④ー
シャンペトルはジェイドに首輪の布袋に魔法羊用紙に書かれてるメッセージを括り付けてとある場所に向かわせる。
この魔法羊用紙は特殊なインクで書かれており目的対象人物以外の者には視えないのである。
これは木族の長を倒すために必要な物を取りに行くためだ。
その間に時間稼ぎをする。
そう、ホープを狙いつけて木族の長に集中を逸らすのである。
運が良ければホープを倒せても問題ないからだ。
そしてジェイドがある物を持ち込んだときに彼らの戦況をくつがえす切り札となる。
「グォォォォォォォォォン!!!!」
そして木族の長の咆哮が再び鳴り響く。
ソイツが拳で振り下ろすときに地面のクレーターができるほどの破壊威力である。
シャンペトル達も充分注意して時間稼ぎを行う。
そしてしばらく戦ってる途中に少しずつ敵を引きつける。
その土砂降りの雨が少し勢いがなくなった同時にシャンペトル達は分散して二手に別れる。
そしてジェイドもようやく戻ってくる。
そこにジェイドを後を追いかけてくる人物はーー。
「ロランさん!例の物をお持ちしてきました!」
小柄な女性はギルドの受付嬢である。
よくシャンペトル絡む棍棒受付嬢。
彼女のリュックサックには例のアレが運び込まれていた。
ー⑤ー
どうやら、仲間の応援でも呼んだかな。
あはは。無理、無理だねー。
いくら強そうな奴でもこの剣王を吸った木族の長には勝てないよ。
僕はこの時までは高を括っていた。
木族の長は方向変えて森林地帯に向かっていた。どうやら敵は戦力を分散して二手に別れたらしい。僕は慌てて元の場所に戻らせようとする。
その時である。
「ロランさん!例の物をお持ちしました!」
何やら小柄な女性が大きなリュックサックを担いで持ってきた。
そこから取り出したのは縄の頑丈そうなロープと瓶詰めした液体……まさか!
僕はようやく事態が気づいたときには手遅れだった。
……なぜならすでに木族の長が燃え広がっていたからだ。
僕は少し経つと奇声をあげまくる。
あたり構わずやだやだを連発して八つ当たりにシャンペトル達を放つが避けてしまうのがイラつく。
「……許さない……」
僕の中からふつふつと湧きあがっていた。
あれは僕がようやく出会えたとっておきの"チカラ"である。
それを壊される者なら僕は容赦しない。
僕は奴らを1人残らず生きて帰さないとこの時誓った。
ー⑥ー
「おー、おー、よく燃え広がるな」
ロランは無事作戦成功に安堵していた。
そこに木族の長が倒れ込み一気に燃え広がっている。
そこに功労者である彼女達。
ファーネとフィーネそれと棍棒受付嬢である。
ロランの立てた作戦はこうである。
まずジェイドにある物をとりに向かわせた後、木族の長を特定の場所を引きつけるために森林地帯に向かわせる。そこで特定の場所に着いてジェイド達が戻って取りに向かわせたのは頑丈の強い縄のロープと油の液体である。
ファーネとフィーネは身軽のこなしさを利用して木族の長を引きつけてロープをくくりつけて転ばす。そこでロランと棍棒受付嬢は森林地帯に油を撒いて全員避難した後、ロランのランスガンに火をつけて一気に燃え広がる寸法である。
木族は火に弱いのでホープは雨を降らして対策していたが油を使われることには思い当たらなかったようだ。
「ご主人様そろそろ、シャンペトルさんの所に向かいましょう」
「そうだな。いく……」
突如、何か強い衝撃で走りロラン達はその場から吹っ飛んで巻き込まれてしまった。
辺りには粉砕される石や草木。
彼らがいた場所にはクレーターが出来ていた。
ファーネとフィーネはとっさに反応して無事だがロランは棍棒受付嬢をかばって反応が少し遅れて巻き込まれてしまった。
棍棒受付嬢を庇うように大木に倒れ込むロラン。
ロランは森林の大木にぶつかり肋骨など折れてしばらくは戦えそうになかった。
そこの上空に一気に落ちたからだ。
そう、彼の怒り矛先であるアレがーー。
ー⑦ー
「何かしら?強い落雷音がしたけど」
マックスは少し驚いてた。
「どうやら、彼の仕業らしい。言呪を唱えてたからな」
シャンペトルとマックスの目の前には怒り狂っているホープがいた。
彼は狂うように笑い出していた。
そう、この報いをさらけ出すためにも彼はこの場でシャンペトル達をこの世から消しさるまでは心から許せなかったから。
ー⑧ー
燃え広がる森林地帯に木族の長が倒れ込んでいた。
その燃え広がる身体には真っ黒な渦巻きのモノが浮かび上がっていることにこの場にいるロラン達にも気がつかなかった。
0124 BattleWinner!