ー①ー
そうだったな、この日は彼女の命日ーー。
8月の梅雨の晩、彼女は斬り殺された。
ーーそうだ。魔剣者の村人達……親父にな。
彼女は村のしきたりである強者と契りを拒否して俺と契りを結んだ。
彼女は俺の子を宿した。
事実を発覚した彼女と俺の家族達が俺たちの仲を裂いた。
そして彼女は斬り殺されたのだ。親父が腹にあった我が子を無惨にも肉塊するほど。
俺は村にあった家宝である魔剣を奪い取り命ながら逃げた。
毎日追手の村人から撃退する日々を繰り返しだったな。
そのおかげなのか俺は魔剣者を超える超越者になってたかもな。
……そうだな。俺が人助けのために立ち上がったのは彼女のためかもしれないな。
あ……。
……。
ー②ー
ーーそこに横たわる2人の亡骸。
無惨にも1人の亡骸は欠損が激しかった。
もう1人の亡骸は頭が柘榴のように破裂していた。
「グガガガガガガ」
その歪な黒い身体が彼らを取り込もうとする時にそのある亡骸に近づくそれはーー。
ー③ー
「グガガガガガガ」
その歪な黒い首なし巨体な存在ーー。
シャンペトルとマックスはそいつを見上げる。
か奴の身体にはいくつか人間たちの"魂"が眠っていた。
その歪な身体に頭のみ視えている。
「……ロラン、フィーネ、ファーネ」
シャンペトルは共に戦った仲間達の名前を呼んでいく。
そしてーー。
「レディ……」
そこに彼女の名前がある。
棍棒受付嬢レディ。
彼女とは長年の付き合いである。
彼女はもうすぐ同じ村に住む幼なじみの彼と来月式を挙げる予定だったから。
シャンペトルは後悔した。
自分は彼女に死に場所与えたような物だからだ。
マックスはそんな彼に察して肩を優しく触れる。
「……彼らは戦士として死んだ。いまさら彼らは後悔はしてないわ。そうでしょ?私たちがやることを囚われている彼らの魂を神の國へ旅立ちすることよ」
「……ああ、そうだな」
シャンペトル達はあらかじめ危険な戦地に出向く時は遺言を常に遺している。
当然レディも遺していた。
彼女も必ずどこかで死ぬ危険性もあった。
そのため家族に心配かけないと今月で最後の受付嬢として仕事終えるはずだった。
彼女を戦地に出向かせたのは自分のせいに感じつつも、この歪な存在に憎悪を湧き上がる。
シャンペトルは白の大剣を黒い歪な剣に
彼の
ー④ー
「もー。お父さんたら、一体どこで道草してるんだろー?」
8月の梅雨の晩。
魔戦者マックス・ハートの娘アベリア・ハートはあらかじめ村の井戸から汲んだ水で野菜を洗っている。10歳になる彼女は自宅でお留守番している。
「まー。ご主人様達もいろいろあるんでしょうし」
ロラン付き人メイド魔導人形エリダは言う。
エリダも野菜を洗っている。
彼女もファーネとフィーネと同じ戦闘はこなせるがロランの計らいでアベリアの護衛兼生活支援している。
木造レンガ自宅の窓から見える長雨はとても冷たかった。
シャンペトル達は先週からアベリアにいる村に戻ってなかった。
彼女達はとても長い日を待ち過ごさなくてはならなかった。
……彼が来るまでは。
ー⑤ー
ーーシャンペトルは黒いしなる鞭のような刃で異形な存在を斬りつける。
「グガガガガガ」
異形な存在を斬りつけてもかすり傷程度だった。
「うぉぉぉぉりゃあああああ」
マックスの叫喚な走り込みでタックルで相手を転ばせて馬乗りになって乱打を繰り広げる。
「ググググググ」
異形者はたまらず手を払いのけて馬乗りから解放される。
マックスは咄嗟に避けて回避する。
しかし、マックスのシャツからは破れてはだけてしまう。
「……しぶといわね」
マックスから余裕の表情は無くなっていた。
あれ以来数時間ぶっ続けで戦っているが化け物はなかなか倒れてくれなかった。
そこでシャンペトルは"チカラ"を使うことにする。
彼の持つ黒の剣を光の剣に変形させるーー。
そこの眩しく光る剣をかざして
その頭上にカウントが取られた。
5!
異形存在は事態に気がついたのか、シャンペトルに襲いかかろうとする。
4!
振り下ろそうとした爪をマックスが瞬時に受け止める。
3!
マックスは異形な存在を持ちあげて放り投げ飛ばす。
2!
勢いよく投げ飛ばされた異形な存在は地面に着地する。
1!
異形な存在は起きあがろうとする寸前ーー。
0!
ーーすでに振り下ろされた。
「
輝く光の巨刃が放たれて化け物は消滅した。
ー⑥ー
「終わったわね」
シャンペトル達はどっと疲れが生じていた。
すでにもう彼らは戦える気力がなかった。
ようやくこれで帰れるだと安心していたーー。
「あなたも笑うのね」
マックスの指摘にシャンペトルは言った。
「俺も笑う時は笑うぞ」
彼女が死んでから彼は復讐する憎しみの塊だった。
しかし、彼には憎しみの微塵もすでにない。
彼は生きなければならない。
そう、彼女やロラン達のためにも。
「そうだ。アベリア達にも伝えないとな、ロラン……」
シャンペトルは改めてマックスを見るとき驚愕した。
ーーすでにマックスはいかれてしまった。
全身体にいくつか風穴が開けられたからだ。
「マックス!?」
彼の呼びかけにも応じてくれなかった。
それどころか最後の戦士として遺言を残せなかったのが悔いであろうとーー。
その化け物は嘲笑ってるかのように感じたシャンペトルは熱くなり魔剣を構えて振り上げた。
そして、無惨にも頭を掴まれてしまった。
「……」
彼は最期にある言葉を思い出した。
『おまえは正しかったよ。俺たちはその道を切り開いて歩いただけだ。せっかく道を切り開いたのにやつらが勝手に道を外して他所に行っただけのことさ』
その言葉の問いにシャンペトルは、
「……ロラン、俺は道を外さずまっすぐに行けただろうか?」
それがシャンペトルの最期の言葉だった。
ー⑦ー
「グガガガガガガ」
異形な存在は早速マックスの亡骸を取り込んで新たに強化されたところである。
ーーそしてシャンペトルの亡骸を取り込もうとすると、
弾かれたのだ。
その青いスライムにーー。
そしてそのスライムはシャンペトルの破裂した頭の花弁に取り込んで融合した。
そして彼は再び立ち上がったのだ。
ーー新たな魔剣者として。
そして変身した彼は早速魔剣を構える。
「
彼の周囲に奇妙なダイスが振り下ろされた。
この"チカラ"は魔剣の最初についていた能力である。
彼はこの"チカラ"は運に左右されやすくチカラの能力は様々であるから使いにくかった。
しかし、変身した彼は賭けてみた。
この弔い一騎討ちに。
「6…4…6……5!」
ダイスの合計は21であった。
彼はそれを見て口元からニヤついた。
そして異形者の頭上に
そしてようやく異形者は完全かつ復元できないほど消滅して幕を閉じた。
ー⑧ー
アベリアの自宅に木の扉に呼びかける彼。
「はーい。どちら……」
アベリアは少し驚いていたかもしれない。
その彼の風貌に。
そして彼はシャンペトル達の最期を伝えるとアベリアは肩が崩れ落ちて呆然としていた。
そしてしばらくして彼女は父親の死に嗚咽を吐いて泣いた。
ーー8年後ーー
「あのー?聞いてますか?」
「うん♪もちろんだよハニー♡」
「私が何か言ってることを理解してますか?」
「もちろんだよ!マイハニー」
「……なら、顔を近づけないでもらえますか?臭いんで」
彼の笑みが無表情になり、少しギルド嬢から離れた。
そして彼はギルド依頼報告を聞いた後、ギルドから出た。
「はぁー。なんで俺に彼女が出来ないだろうか?俺の近くいるのは筋肉暴力女だけか……」
その時彼は
彼は直感した。
背後に振り向いてはならぬと。
そっと彼は知らんぷりしながらこっそりと退散する。
「……ジェイド?」
彼はその時全速力で逃げようとする。
そう、彼はシャンペトルの相棒だったジェイド。
シャンペトルの亡骸の頭と融合して新たな魔剣者ジェイドとして転生したのだ。
そして銀髪に黒い狼頭が"トレードマーク"である。
そしてジェイドの相棒魔戦者アベリア。
彼女も父親の意志を受け継いで冒険者となった。
そしてジェイドの首筋を捕まえたアベリアはお仕置きとしてジャイアントスィングで吹き飛ばす。
その飛ばされた方向は果物屋にぶつかり破壊された。……後で同行してるエリダにこっぴどく叱られて店の売り物を弁償した。
彼女もロランの遺言に従い主人はアベリアにしてる。そしてロランの形見であるランスガンを装備してる。
そしてこの賑やかな3人トリオは新たな出会い試練や別れを繰り返すことになる。
そして彼らは次第に"
ジェイド達の物語はまだ始まったばかり。
0144 Perfect Clear!
メイン登場人物
シャンペトル・ブーケ
ロラン・アルバート
魔導人形姉ファーネ
魔導人形妹フィーネ
マックス・ハート
レディ・ハンマー
ホープ・エアレイザー
ジェイド・ブーケ
アベリア・ハート
魔導メイド人形エリダ
魔剣者シャンペトル・ブーケの物語 完