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11 ねこ様会議はコタツに勝てない


 ちなみに、ねこ様達の会議は、ニンゲンが交通事故にあった直後にも行われていた。会議は何度も行われているのだ。

 その結果について、これまで述べていなかった気がするが。

 ちょっと章立てを間違った気がするが。

 それはともかく。


 ねこ様達は、ニンゲンのこれからについて、ちゃんと会議をしていた。

 もちろん、ミケさま主導、ニンゲンの異世界転生を邪魔(…――)した後、ちゃんとこれからについて会議をなさっておられたのだ。

 そう、無論。

 ニンゲンが交通事故のケガを何とかしようと苦闘している間、無策ではなかったのである。

 だがしかし。


「コタツって、最高ですわー!」

 ミケ女王様が、ころりん、とコタツの中でころがっておられる。

 ころころ、ころりん。

 ごろごろ、しあわせ。

 一応、ニンゲンのケガした脚元に、温かな身体を寄せてくださっている。

 そう、会議の結果。


「ニンゲンを、温めるのですよ」

 結論は、それだった。

 ねこ様達は、ニンゲンのケガを癒やすことにしたのだ。

 その結果。


「フライング・ボディアタック―――!」

 しま王子が、ニンゲンにはわからないねこ語でいいながら、たのしそうにニンゲンのケガした方の肩に飛び降りる。

「うあっ、…!」

 ニンゲンのうめき声も、しま王子にとっては、”ニンゲンって、いつもへんな鳴き方するよね?”である。

 ――ニンゲン、ボクがあたためてあげるもんね!

そうして、ニンゲンの腕の中でまったりおひるねしたり、まったりねそべったり、ずっしり腰の上に陣取ったり、していたのである。



 ふく姫は、まだニンゲンに心をゆるしていない。

 たとえ、ごはんを運んで来てくれるときに横になって、

「わたくしをなぜるがよろしいのよ?」

と、ニンゲンにはわからない言葉で――もともと、無言で横になるだけだったりするので、心の声だからもっとニンゲンには理解できていないが――いって、顎の下や、ひたいをニンゲンになぜさせてから、ごはんを食べる事にしていようと。

 絶対に、まだ心をゆるしてはいないのである。

 だから、しま王子達がニンゲンを温めることを会議で決定しようと、それに従うつもりは絶対にない。

 ニンゲンが、お昼寝しているときに。

 そーっとよこになって、ニンゲンと同じかたちにのびて、そーっと背中をそわせて、ぴったりくっついてねてみているだけだ。

 それも、ニンゲンが動けば、ぴゅっ、と逃げて。

 押し入れにニンゲンが用意したクッション入りのふく姫専用段ボール箱に逃げ込むのである。ちなみに、ニンゲンはふく姫が安心して逃げられるように、整理した押し入れの中をふく姫専用にして段ボール箱を用意している。

 この処のニンゲンの悩みは、ふく姫お気に入りの段ボール箱と中のクッションが、かなりよれてきているので箱を取り替えて中身を一度洗濯したいのだが、中々タイミングがつかめていないことだ。

 ともあれ、そんな風にふく姫はニンゲンに対して心をゆるさずに冷たい対応をしているのである。



 そんな風に、ねこ様それぞれが会議で決まったことを各自それなりに実行していたのだが。

 ときは、まだ完全に温かくなる前の季節。

 片付けられていないこたつは、あまりに魅惑的であった。

 封鎖された、ほどよく暗い空間。

 上かけという周囲の空間から、コタツ内部を仕切る仕組み。

 ほどよく温かく、ニンゲンがときに温度を調節することでまったりと心地よいコタツの中は、 ねこ様達にとり素晴らしい魅惑の空間であった。

 第一、狭いのが良い。

 薄暗いのが良い。

 ほんのり温かいのが良い。

 ねこ様達的に、コタツは最高の空間である。

 異論は認めない、ねこ様達的に。

「コタツって、最高ですわねー!」

 ごろごろ、ころりん。

 ミケさまはコタツを満喫しておられる。

 そう、会議で決定したけれど。


 ミケさまはコタツにころりんをされてしまい。

 ニンゲンを温める、という自らが決定なされた議題を、すでにまったくお忘れになられて、コタツでまったりなさっておられたのであった。――――


 まあ、ニンゲンもコタツで温まっていたのであるし。

 ついでに、ミケさまもコタツの中でとはいえ、ニンゲンの脚にちょっとは身を寄せられて、すこしは温めておられたのであるし。

 うん。

 多分、きっと。

 一応、ミケさまもニンゲンを温めては、―――…。



 つまりは、ねこ様会議はコタツに勝てなかったのだ。

 もっとも、ねこ様達がねこ様達である以上、コタツに勝利することなど、――――。


 ちなみに、ふく姫はこのころ別室でお一人様の快適さを満喫しておられた為、コタツは部屋になかった。

 しま王子も、ニンゲンの腕にダイブする以外のときは、コタツにこもって丸くなるのも大好きであった。

 ミケさまは、――――。

 ミケさまは女王様である。

 だから、許されるのだ。

 何もかもが。


 まあ、当然、ねこ様であるからには何もかもが許されるのが当然なのだが。


 そんなわけで。

 ねこ様会議はコタツに勝てない、という結果となったわけであった。

 ミケさまがコタツに勝てなかっただけだとか、いっちゃいけません。

 いいですか?

 絶対、ダメですからね?


 そんなわけで、ねこ様会議はコタツに勝てない、というのが現実であり。

 ニンゲンは苦闘しつつもねこ様達に温めてもらいながら交通事故のケガを癒やしたのでありました。

 そんなこんなが、会議の後にはあったのですよ。―――


 おそるべし、コタツ。

 誰も勝てません。




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