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第2話


「ねぇ、年内にもう一度くらいはシンスターに来るでしょ?」


「そうだねぇ。そうしたいけど、もう少ししたら寒くなるしなぁ」


暦は既に十月。

シンスター辺境伯領は国内でも北側にあるので、あと一ヶ月もしたら雪が降り始める。

そうなると、ここまでの移動はともかく、野宿は命に関わる。


それに冬場は魔物も冬眠するらしくてあまり出なくなるしね。

だからこそ、今くらいの季節はそれに備えて魔物が活発になるから私達冒険者にとっては稼ぎ時なんだけども。


「確かにねぇ。あ、それならどっかのダンジョンに潜らない?ダンジョンなら寒さとか関係ないし」


「あー、それいいね。なんだかんだでキャロル達とは最初の一回しか潜ってないし」


知り合ってからもう一年。

いや、むしろまだ一年しか経ってないのか。

キャロルとは本当に気が合うし、同世代の女の子で同じように戦える子って少ないからね。

女性の冒険者の絶対数が少ないのもあるし、いても同年代だと狩りには出ずに採取や町中での仕事を中心にしてる子がほとんどだから。


戦える女冒険者はほとんどが私よりずっと上の年齢の人ばかりだ。

そういう意味では、メリッサさん達もかなり若いと思う。

年齢の話すると怖いから言わないけど。

若いって言っても笑ってない笑顔でめっちゃ圧かけてくるんだよね。マジ怖い。


「うん!そうしよ!またガッツリ稼ぐわよー!!

…………来年になったら、あまり冒険者活動出来なくなるし……」


「私も負けずに稼ぐぞー!!」


キャロルの後半の言葉は聞こえなかったフリをした。

たぶん私に聞かせるつもりで言ったんじゃなくて、無意識に漏れた呟きだと思うし。


それに何となくだけどわかるんだよね。

たぶんと言うか、ほぼ間違いなくキャロルは良いところのお嬢様だと思う。


ランクの割にはいい装備を使ってるし、普通に接しているようで、メリッサさん達がキャロルに対してかなり気を使っているのがわかる。

遠慮してるという感じではないけど、絶対にキャロルが傷付かないように配慮しているのはすぐにわかった。


たぶん、シンスター支部の冒険者達もキャロルのことは知ってるんじゃないかな。

だってさ、キャロルってばとてもじゃないけど冒険者とは思えないような美少女なんだよね。

髪の毛サラッサラだし!

メリッサさん達もみんな綺麗だけど、一人だけ次元が違うもん。


それなのに、他の冒険者から絡まれてるのを見たことがない。

最近は少なくなって来たとは言え、私ですらたまーに変な奴にナンパ目的で絡まれるのにね。

まぁ、私だって見た目はそう悪くないとは思いたいけど。


みんなキャロルの素性を知ってて、暖かく見守ってる感じなんだよね。

実際、やらしい顔でキャロルに近付こうとしていた冒険者が怖い顔をした他の冒険者に連行されて行くのを見たことがあるし。


「ところで、ギルドに戻ったら直ぐにクロームズに帰る?」


「とりあえず、なんかしらクロームズ方面までの護衛依頼がないか確認してからかなぁ。

あればそれ受けるし、なければ一泊くらいはゆっくりしてから帰る」


「おっけー。それじゃ、またこっち来る時はギルドに手紙出しておいて!

それに合わせてダンジョン行きの日程組むから!」


「わかった!」


こうしてギルドへと戻ると集めた素材の納品を済ませ、運良く割のいい護衛依頼を見付けることが出来た私は、シンスターを離れクロームズへと帰還した。

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