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第5話

絶望から抜け出せないうちにマスターの執務室から追い出され、もう勉強をする気にもなれずにすごすごと帰宅。


のろのろと道中の屋台で買ってきたご飯を食べてお風呂に入り。

そのまま夢ならば覚めてくれと思いながらベッドに入って迎えた翌朝。


テーブルの上には、無情にもマスターから渡された領主様からの手紙がある。


「あー、やっぱり現実かぁ……」


どうにか回避出来ないものかとは思うけど、領主様からの呼び出しをすっぽかしでもしようものなら、それこそ首が飛ぶ。


本当に、もう心の底から本っ当に嫌だけど。

行かない訳にはいかないか……。


「たぶん何かの依頼だよね?

それなら、一応装備だけはきちんと付けて行くべき?」


その場でいきなり出発とかはないだろうから、それ以外の支度は帰ってからで大丈夫よね?

どんな依頼で何処まで行くことになるのかがわからないと、食料とか薬とかその辺は準備しようがないもんね。


ふんすっと気合いを入れて起き上がると、顔を洗って歯を磨いて、朝ご飯を食べて身支度を整える。


髪はお馬さんの尻尾のように後ろで一つに纏める。

まぁ、そのまま垂らしても肩までしかないんだけど動く時に邪魔だからね。

そして、寝巻きを脱いで魔蜘蛛の糸で作られたシャツを着て、下には焦げ茶色のズボン。

このシャツは魔力耐性と防刃性が高い優れ物。

見た目もツヤツヤしてて綺麗。

お貴族様に会うのにもいいんじゃないかな。

ズボンは普通の綿のだけど、まだ買ったばっかりの新しいやつにした。


皮製の丈夫なブーツに履き替え、両手には手甲を付け、足には脛当てを装備。拳鍔(ナックル)はとりあえずは付けなくていいかな。ポケットに入れてこう。

これ、拳鍔に手甲と脛当てでセットの装備なんだけど、ダンジョンでドロップしたミスリル製なんだよね、むふふ。

白銀色で綺麗だし、重さを感じないくらいに軽い上に魔力伝導率がめっちゃ良くて、私の戦闘スタイルにピッタリなんだ。

買おうとしたら、たぶん私の住んでる借家が余裕で買い取れちゃうくらいの値段はする。いや、もっとかも。


シャツの上からワイバーンの皮で作った胸当てを付け、太腿に巻いたベルトに投げナイフを取り付け、腰には魔物の解体にも使う大振りのナイフ。

まぁ、今日はこれは要らない気もするけど気持ち的にね。


全て身に付け終わったら、最後にフード付きのマントを羽織って完了!

どこからどう見ても立派な冒険者!


まぁ、実際冒険者なんだけど。

領主様にも冒険者として呼ばれてるんだろうから、この格好で失礼ではないはず。


とりあえず支度は出来たけど、領主様のお屋敷に行くのは午後からだからさすがに今から行くのは早すぎる。


私が住んでるのは、クロームズ子爵領の領都ロープロスの町外れ。家賃が安いし門の近くにあるギルドが近いからね。

で、領主様のお屋敷があるのは街の中心部だ。

乗り合い馬車を使えば一時間もあれば行けるはず。


「あ、せっかくだから中央広場のカフェでも行ってみようかな」


中央広場からなら領主様のお屋敷までも近いし、なんか色々とお洒落なカフェがあるって先輩の女冒険者の人達が言ってた。


気にはなってたけど、微妙に遠いからまだ行けてなかったんだよね。

他に用もないのにわざわざ行くのがどうにも面倒くさくて。


「よし、そうと決まればカフェで昇格試験の参考書読んで時間潰そう」


たすき掛けにしたマジックバックに、お財布や参考書を入れると、私は長年住みなれた我が家を後にした。

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