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第6話

噂のカフェで、色々あるドリンクメニューから全然わからないのでフィーリングで注文し。

冒険者スタイルで周りから少し浮いているような気がしつつも、優雅に読書をする出来る女ムーブをすること数時間。


ずっと居座るのが少し申し訳なくて何杯も注文しちゃった……。どれも美味しかったけど。


とりあえずお昼もそのままカフェでサンドイッチを食べて現在の時刻は午後一時半。

腹ごなしを兼ねて歩いて行けば、領主様のお屋敷までは三十分くらいのはず。


それならちょうどいいかなとカフェを出て、普段あまり来ることのない町の中心部の景色を眺めながら歩くこと約三十分。


私の目の前にでっかいお屋敷がある。

まぁ、結構前から視界には入ってたけどね。


冒険者ギルドも大きな建物だと思ってたけど、さすがは領主様のお屋敷ってことかな。

ギルドなんかじゃ比較にならないくらい大きいねこれ。

やっぱりお貴族様はすごいわ。


「ここはクロームズ子爵様の邸宅だ。何用だ?」


ぽかーんとお屋敷を眺めていたら、これまた立派な作りの門の前にいた門番が明らかに怪しんでいる様子で声を掛けてきた。

まぁ、そりゃそうか。

明らかに場違いな冒険者が門の前で突っ立ってるんだもんね。

門番なら怪しんで当然か。


「ごめんなさい、怪しい者じゃないんです。

領主様から呼ばれて、冒険者ギルドから来ました」


首から下げていた冒険者タグを見せながら昨日マスターから渡された手紙を差し出す。

私に声を掛けてきた方の門番がそれを受け取って確認してくれてるけど、もう一人の門番は私から全く視線を外そうとしてないのがわかる。

そっちに視線を向けた訳じゃないけど、警戒してるのがビシバシと伝わってくるもんね。

少しでも怪しい動きをしたら、躊躇うことなく斬りかかってくるんだろうなぁ。


さすが領主様のお屋敷。

優秀な門番がいるんだね。

故郷の村の出入りを見てる門番とか、いっつも眠そうにしてたのに。


「確かに確認した。この場で少々お待ち頂きたい」


手紙を読んだ門番さんは、私に手紙を返してくれるとサッと身を翻してお屋敷へと向かって行く。


良かった。

きちんと領主様から呼ばれてギルドから派遣されて来たって信じてもらえた。

私って背も高くないから見た目は小娘にしか見えないんだよね。

だから、こんな小娘がギルドからの使いだなんて信じられるかって言われたらどうしようかって少しだけ不安だったのよ。


そうしてそのまま、大人しくその場で待機。

私への警戒を多少は緩めつつも、完全には解かない残った門番さんに愛想笑いをしてスルーされてみたりしながら待つこと数分。


白髪頭の立派な服を着たおじ様を連れて門番さんが戻って来た。


「先程は大変失礼いたしました。どうぞお入りください」


私がきちんとした使いだと信じてくれたらしく、最初とは打って変わって丁寧に頭を下げる門番さんによって門扉が開かれる。


「申し訳ありませんが、武器はこちらでお預かりいたします」


「あ、そうですよね。はい、どうぞ」


ペコペコ頭を下げながら門を入ったところで呼び止められたので、大人しく投げナイフや解体用ナイフを差し出す。あ、拳鍔もか。

領主様に会うのに、武器は持ち込んだらダメか。

うん、そりゃそうだ。


「ほう、これは良く手入れをされてますね」


「あ!わかります!?」


私からナイフ一式と拳鍔を受け取った門番さんが感心したように言うので、つい嬉しくなってしまう。

ミスリル製の拳鍔じゃなくて、普通の鉄製でしかないナイフ類にってのが余計にね。

だって、大事に手入れしながらずっと使ってるんだよこれ。


「元はそんな良いやつじゃないんですけど、結構長いこと使ってて……」


「……コホン」


「「あっ……すみません」」


門番さんと盛り上がりかけたところで、白髪頭のおじ様が咳払いをする。

そうだよね、領主様が待ってるんだもんね……。


素直に謝ったからか、怒ってはいなさそうだけど。

ここは冒険者ギルドじゃなくてお貴族様のお屋敷なんだから、気を付けないと。

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