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第14話

あの日はそのまま自分の家へと帰ったけど、その翌々日。


私は再び呼ばれて領主様のお屋敷を訪れている。

もちろん、先日の話の続きをするためだ。


とは言っても、あの後家に帰ってからはもちろんのこと、昨日も一日中ずっと。

現実を受け止めきれずに、自宅で無為に過ごしてしまった。


話を聞いた時の混乱からは多少は抜け出せたけど、奥様や領主様が私をどうしたいのかもわからないし、自分がどうしたいのかなんて考える事も出来ない。



「ごめんなさいね。本当ならもっと貴女に気持ちを整理する時間をあげたいのだけど、そうも言ってられないの」


「いえ、一昨日よりは落ち着いてますから」


だから、奥様の言葉にもそうとしか返せない。


「そう……。確かに顔色はあの時に比べれば良くなってはいるわね。

それならば、早速で悪いのだけど、本題に入らせてもらってもよろしいかしら?」


「はい」


たぶん、予想外の出来事で混乱してる上に情報が絶対的に足りてないんだと思う。

これ以上話を聞いたら余計に混乱することになるかもしれないけど、それでも今はもっと情報が欲しいのも確かだ。


お母さんがどういう経緯で私を産んだのかとか……ね。

奥様は私は不義の子ではないと仰ったけど。


「単刀直入に言うわね。

先日、入学要項を見てもらいましたが、アリサには貴族学院に入学してもらいます」


うわ、言葉通りに本当に一気に本題から来たな。

この前書類を見せられたし、その可能性も考えてなかったわけではないけど。


「それは決定事項ということでしょうか?」


奥様の言い方からしてたぶんそうなんだろうけど。

でも、回避出来るなら回避したい。

ずっと平民の、しかも冒険者として生きて来た私が、今更お貴族様の中になんて入れるとも思えないし。


「そうね、決定事項です」


しかし、奥様の言葉は私の期待に反するもの。

まぁ、たぶんそうかなとは思ってたから驚きはしない。


「本来ならばね、貴女の意思も確認した上で入学させるかの判断をすべきなのはわたくしにもわかっているのです。

ですが、こうして入学要項が送られて来てしまった以上は、今から入学辞退というのは難しいと言わざるを得ないの。

余計な勘繰りをされることになりかねないから」


奥様が続けて説明してくださったんだけど、貴族学院への入学はお貴族様の子女にとっては義務であるらしく、貴族籍がある以上は基本的に避けられないんだって。

例外としては、病弱で学院生活に耐えられないなどの理由があれば免除されるらしいけど、当然ながらそれには医師の正式な診断が必要になる。


なるほど。

確かに私は健康そのものだから、病弱とかの理由で入学辞退なんてのは無理なんだろうなっていうのはわかった。わかったけど……。


「あの、奥様。

そのお話だと貴族籍がある場合ならですよね?

私は平民なんですけど……」


それなら入学する必要なんてないんじゃないかな。

奥様は、私の言葉にわかると言うように頷いてはくださったけど、眉間に皺を寄せて難しい表情を浮かべる。


「貴女の言う通りね。

確かに貴女に貴族籍がなければ入学する必要はない。

でもね、アリサの立場では残念ながらと言うべきかしら。

貴女は既に戸籍上ではアリサ・クロームズなのよ」


「…………はい?」


なんて?

思わず素で聞き返してしまった私はきっと悪くないと思う。

先日から何度目かもわからないけど、それくらい予想外だったから。


「アリサ、貴女はね。

国にクロームズ子爵家の庶子として出生届が出されているの。

だから、貴族籍もあるクロームズ子爵令嬢なのよ」



私、お貴族様だった?ってこと?

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