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第5話「てるてる坊主」

 20XX年6月11日


 ザーザーザー…

 窓を打つ雨の音がずっと止まない。


 梅雨の季節って、なんだかジメジメして気持ちも重たくなるよね。

 でも、明日は楽しみにしていた遠足の日。

 この雨じゃ中止になっちゃうかもしれないから、ボクは願いを込めて「てるてる坊主」を作ることにした。


 ティッシュを丸めて、輪ゴムできゅっと留めて、

 マジックでニコニコ顔を描いたら――できあがり。


「明日、晴れますように」


 ボクは自分の部屋の窓辺にてるてる坊主を吊るした。

 そのとき、ふと向かいの家の窓に目がいった。


 カーテン越しに、白い何かが揺れてる。


「あ、お向かいさんもてるてる坊主飾ってる」


 ゆらゆらと揺れる白い形は、たしかにてるてる坊主に見えた。

 でも、なんだかやけに大きい気がする。

 人の胴くらいあるんじゃないかな……?


「まぁ、大きい方がよく晴れるかもね」

 そう思って、ボクは気にせず階下に降りた。


「ボク~、ごはんできたわよ~」


「はーい!」


 その日は普通にごはんを食べて、テレビを見て、眠った。

 雨は、夜になっても止まなかった。


 ⸻


 次の日、遠足は中止だった。

 でも、お向かいの家の“てるてる坊主”は、今日もまだ揺れていた。


 次の日も、その次の日も――

 晴れてもずっと、カーテンの奥でゆらゆらと。


 ⸻


 てるてる坊主 完


 ⸻


 ここからネタバレ解説と考察だよ。

 カウント0になるまでスクロールしてね。



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 ネタバレ解説・考察

  • ボクが「てるてる坊主」と思っていたものは、人間の“首吊り死体”だった可能性が高い。

  • 「人並みの大きさ」「カーテン越しに揺れる」「雨が止んでも飾られている」という描写がすべて伏線。

  • 無邪気なボクは気づかずに日常を過ごしていたが、読者は後からその“異様さ”に気づいてゾッとする構成。

  • 本当にてるてる坊主を飾っていたのはボクだけだったのかもしれない。

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