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第7話「サッカースタジアム」

 20XX年10月8日


 ここは、とあるサッカースタジアム。

 ボクは、地元のクラブチームのゴールキーパー。今日は大事な決勝戦だった。


 観客席は超満員。まるで一つの生き物みたいに、応援の歓声がうねっている。

 スコアは3対2で、ボクたちがリード。残り時間はあとわずか。もう一点でも入れられたら、延長になってしまう。


 相手チームは最後の攻撃にかけてきた。

 そしてボールがボクのゴールに向かって一直線に飛んでくる!


「来た……!」


 思いきりジャンプして、ボールをキャッチ!


 その瞬間――


 ピーーーーッ!


 終了のホイッスルが鳴った。


「やった……!勝ったんだ……!」


 そう思ったときだった。


 スタジアムが、**グラッ……**と傾いた気がした。


 バランスを崩して後ろに倒れそうになったボクは、そのままゴールネットにスポッと落ち込んでしまった。

 おかしい。傾きが加速してる。まるで地面ごと斜面になったみたいに。


「え?なにこれ……!?」


 味方の選手、相手チームの選手、審判までもがボクの後ろに次々と滑り込んでくる。


 ネットの中はもうぎゅうぎゅう詰め。身動きが取れない。誰かの肘がボクの顔に当たって、息ができない。


「や、やばい……!」


 けれど傾きは止まらない。

 今度は――観客たちが、座席から転がり落ちてくる。


 まるで波のように押し寄せてくる人、人、人。


 もう止められない。

 ゴールネットは悲鳴のような音を立ててビリビリッ……と破れ、その勢いでボクたちはまとめて場外へと転がり落ちていった。


 気がついたときには、ボクの周囲にはもう誰もいなかった。

 空には青空が広がっているのに、スタジアムは――もう、そこにはなかった。


 ⸻


 サッカースタジアム 完


 ⸻


 ここからネタバレ解説と考察だよ。

 カウント0になるまでスクロールしてね。



 3




 2




 1





 0


 ネタバレ解説・考察

  • タイトルの「サッカースタジアム」は**“坂”カー・スタジアム**という言葉遊び(ダジャレ)になっている。

  • 最初は普通のサッカーの試合として描かれていたが、実はスタジアム全体が急坂になっていたという異常な設定。

  • スコアの「3対2」も、“32(さか)”という隠れたヒント。

  • 徐々にスタジアムが坂道のように傾いていき、人々が雪崩のように転がり落ちていく恐怖がじわじわと描かれている。

  • 最後には観客も巻き込まれ、全員がスタジアムから場外へと消えてしまう…この世界が何かおかしいと気づいたときには、もう遅かった。

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