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第8話「サイコロうらない」

 20XX年7月7日


 今日は日曜日。

 山おじさんと一緒に町をぶらぶらしていたら、やけに人が集まっている路地に出くわした。


「行列……? なんだろう?」

 近づいてみると、どうやら小さなテントの中で占い屋が開かれていた。

 古びた布地に書かれた「的中! 運命のサイコロ占い!」という文字。


 なんだか怪しいけど……ボクは好奇心が勝って、山おじさんと一緒に並ぶことにした。


 行列はなかなか進まなくて、1時間以上かかった。ようやく順番が来て、ボクたちはテントの中へ入る。


 そこには白い着物をまとった、腰の曲がったおばあさんがひとり。

 目が合った瞬間、背筋がひやっとした。まるで、全部見透かされてるみたいだった。


「さて……今日は、どんな運命をうらなうんじゃ?」


「えっと……明日テストがあるんだけど、何点くらい取れるか知りたい!」


「ふむ……では、この運命のサイコロで試してみようかね」


 おばあさんは小さな木箱から、色あせたサイコロを取り出した。

 見た目は普通。でも、どこか古いお守りみたいに光っていた。


「よいかい。これは運命のサイコロ。出た目で結果が決まる。

 1が出たら100点。2か4は50点以上。3か5は50点以下。そして……6が出たら、0点。」


 ボクは思わず手を合わせて拝んだ。

「1、出ろ……! 1……!」


 おばあさんは何やら呪文のような言葉をつぶやきながらサイコロを両手でさすり、ころんと転がした。


 コロコロコロ…… 

 止まった目は――1。


「……やった!」

 まさか当たるとは思ってなかったけど、ちょっと嬉しかった。


 次に、山おじさんは「明日の天気」を占ってもらった。

 出目は4……「雨」らしい。

 でも天気予報では晴れだったから、半信半疑のまま家に帰った。


 ⸻


 翌日――。


 テストは……なんと全問正解の100点!

 先生にも褒められたし、お母さんからおこづかいも増えた。


 しかも帰り道、天気予報とは裏腹に空が曇り、ぽつぽつと雨が降り出した。

 ……本当に当たってた。


 ⸻


 数日後。ボクと山おじさんは、またあの占い屋に行ってみた。

 お礼に和菓子を持っていったんだけど、近づくと何やら揉めごとの声が聞こえてきた。


「なぁ、売ってくれよ! そのサイコロ!」


「これは占い用。売りものじゃないよ」


 見知らぬ若い男が、おばあさんに詰め寄っていた。どうしてもあのサイコロを手に入れたいらしい。


「じゃあ、こうしようかね」

 おばあさんは、面倒くさそうに言った。


「サイコロを振って1以外が出たら……売ってやる。

 だが1が出たら……天罰がくだるよ?」


 男は笑ってうなずいた。


「そんなの当たりっこないだろ」


 おばあさんは、無言でサイコロを握り締めた。

 ゴロゴロ……ころん。


 ――1。


 その瞬間、空が真っ黒になって、ゴロゴロ……ドォンッ!

 信じられないほど大きな雷が、男の頭上に落ちた。


 黒煙があがり、男はその場で真っ黒焦げになった。


「……やれやれ。だから言ったのにねぇ」


 おばあさんは、何事もなかったかのように次の客を呼んだ。


 ⸻


 それを見たボクは、こう思った。


 ボクは、あのサイコロ……ほしくないや。


 ⸻


 サイコロうらない 完


 ⸻


 ここからネタバレ解説と考察だよ。

 カウント0になるまでスクロールしてね。



 3




 2




 1





 0



 ネタバレ解説・考察


 おばあさんのサイコロは**「出目を操作できる」可能性がある。

 しかもただの占い道具ではなく、“運命を左右する呪物”**のようなもの。

  • ボクが「1」を出したときは、純粋な願いと運が合わさった偶然の幸運だったのかもしれない。

  • しかし、欲にまみれた男がサイコロを手に入れようとしたときは、あえて「1」が出され、“天罰”という形で罰を受けた”。


 つまり――このサイコロは、**「使う者の心を試す」**ものだったのかもしれない。

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