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第7話 持っている者

世の中には持っている者と持っていない者がいる。

持っている者とは、ここぞというとき、したいことができる人のことをいう。

逆に、持っていない者はここぞというとき、思っていることの逆の結果を引く人のことだ。

私は持っていないなと常々思う。

持っていれば、こんな生活はしていないだろう。

こんな生活とは、つまり、平凡で退屈な凡人の生活だ。

しかしと、私はそこで思う。平凡な方がいい面もあるのではないか。

というのも、持っている人は大抵注目されていて、生活に不便を感じそうだからだ。

その点、私は誰にも注目されないで、透明人間のような生活を送れる。

悪いことをしても、見逃される。

とはいえ、限度はあって、その点が平凡なのだ。

誰にも害をなさない見えない微生物のようなものだ。

ところで、このパンは食べられるだろうか。

ずいぶん前に買って、そのままになっている。

私は恐る恐るそのパンを口にする。

微生物が悪さをしないといいがと思いながら。

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