世の中には持っている者と持っていない者がいる。
持っている者とは、ここぞというとき、したいことができる人のことをいう。
逆に、持っていない者はここぞというとき、思っていることの逆の結果を引く人のことだ。
私は持っていないなと常々思う。
持っていれば、こんな生活はしていないだろう。
こんな生活とは、つまり、平凡で退屈な凡人の生活だ。
しかしと、私はそこで思う。平凡な方がいい面もあるのではないか。
というのも、持っている人は大抵注目されていて、生活に不便を感じそうだからだ。
その点、私は誰にも注目されないで、透明人間のような生活を送れる。
悪いことをしても、見逃される。
とはいえ、限度はあって、その点が平凡なのだ。
誰にも害をなさない見えない微生物のようなものだ。
ところで、このパンは食べられるだろうか。
ずいぶん前に買って、そのままになっている。
私は恐る恐るそのパンを口にする。
微生物が悪さをしないといいがと思いながら。