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第8話 作家

ある日、さまざまなことへの批判的な内容で売れていた人気作家が、誰かに殺される。

ニュースでそれを見た私は、何かを書くということは覚悟が要るのだなとしみじみ思う。

というのも、書いた対象への影響は否めないのだから、批判的な内容は、自分を大事にするなら、避けた方が安全だからだ。

私はブルっと身震いをする。

以前に、ある団体のことをおもしろおかしく書いたことがあったのを思い出したのだ。

私は実家に電話をかけて、原稿を破棄するように親にいう。

親は原稿はもうないといい張る。

私はそれでもっと怖くなって、すべてのデータを消していく。

パソコン、スマートフォン、紙、ノート、メモ‥‥。

そして、すべて消したことを確認し、ほっと息をつく。

しかしあの原稿だけがないのだ。私はすぐに実家へ出発する。

実家に着き、原稿を探すが見つからない。

あれがあの団体に見つかれば、私の命はないかもしれない。

部屋が泥棒に荒らされたかのように散らかった状態で、私は、しかしないのだからそれはそれでいいのではないかと、思い直す。

要するに、影響力の問題なのだから、私ごときが書いたものの影響などたかが知れていて、誰も気になどしないだろう。

私はようやく本当に安堵し、帰途に着く。

親はそんな私を見て呆れているようだ。

と、その顔を見て、私はあるデータを消していないことを思い出す。


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