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第10話 自然さ

空中の物は地面に落ち、太陽の光は熱く、影は太陽の反対にできる。

私が暑さにやられて日陰に入ると、そこには何人もの人が、ちょっとした癒しを求めて入り込んでいる。

「夏は好きなのだけれど、近ごろは暑すぎてかなわないね」「本当に暑いね」などといった会話が聞こえてくる。

私は夏の暑さを保存できたらいいのにと思う。冬は冬で結局夏が恋しくなるのだから。

空を見てみるとカンカン照りで、この日陰から出る気を失せる陽気だ。

しかし信号が変われば横断歩道を渡らなければいけない。

結局信号は変わり、みんな横断歩道を渡る。

信号は点滅し、最後には赤に変わる。

夏とはつまり春の後の季節のことだ。実際、秋の前の季節ではないのは確かだ。

というのも、体は記録装置だからだ。

夏が秋の前にあるというのは反省でしかわからない。それに比べて、夏が春の後にあるというのは、自然とわかる。体は春を覚えているから。

暑いというのは寒い後に起こる。ずっと暑いままならば、数字としては高いだろうが、暑いという印象はないだろう。

私は秋が恋しくなると同時に、秋が思い出せない。

慣れというのはそういうことで、つまりは人は環境にできるだけ適応しようとしている。

そして100年もすれば、ここにいる人は誰もこの世にはいない。

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