雨の後に散歩をしていると、ふと見たビルに模様が浮き出てくる。
魅入られてじっとそれを見ていると、この近くに隠された宝のありかを表す地図だとわかる。
私はスマートフォンを取り出してそれを写真に撮り、すぐさま示された場所へと向かう。
たどり着いたそこは雑居ビルの一室で、扉には「メルティスパイス」と書いてある。
飲み屋だというのは周りの雰囲気からもわかるが、果たして鍵は開いているのかどうか。
私はドキドキしながら、扉の取っ手に手をかける。
ちょうどそのとき、外でパトカーのサイレンが鳴り出す。
私はそこから逃げ出すが、ビルのエントランスで警察に取り押さえられる。
「ずっと見張っていたんだ! 何をしたかわかるか!」と、私を背後から押さえている警官がいう。
私は事情を説明する。もちろんでたらめだ。
手錠をかけようとしている警官が、それを聞いて、「本当のことをいえ! お前があの宝を独り占めしようとしていたのはわかっているんだ!」と大声で怒鳴ってくる。
私はなぜ彼らが宝のことを知っているのか疑問に思う。しかし彼らは何人もいて、多勢に無勢なのだ。私はついに観念する。
パトカーで彼らのうちの二人に連れられながら、私はカモでしかないのだとしみじみ思う。
「いまごろあの飲み屋の中で宝を見つけていることだろう。しかし宝とは何だったのだろう。警察が動くくらいだからすごい物に違いない」。
数年後、私はその宝が何だったのか気づく。
というのも、子どもの間で、私の名前のついた、決められた一人を大人数で陥れる遊びが流行り出したからだ。
その遊びの重要な部分は、大人数の側が、密かに一人の側を誘い出すというものなのだ。