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第19話 雪

夏休みのある日、私は夏の暑さに負けて、冬が恋しくなる。

冬の時期にはあんなにうんざりした雪が、とてもきれいで幻想的なものに思えてくる。

そんな気持ちを知ってか知らずか、滅多に会うことのない友人が訪ねてくる。

「雪を持ってきたんだ」と友人はいう。

私は、とりあえず家の中に案内する。

そしてお互いにソファーに座ると、友人は紙袋を私の前に差し出す。

「スノーパラダイス」というロゴがいかにも胡散臭い。

「開けてみろよ」と友人はワクワクしているようだ。

私はしかたなく紙袋の中をのぞく。

そこには箱が入っている。私は恐る恐る箱を取り出し、ビニールの厳重な包装を取りにかかる。

数分の時間をかけて開けてみれば、スノードームが入っている。

私はがっかりする。こんなの雪でも何でもないじゃないか。

しかし友人は目を輝かせて、「逆さにしてみろよ」と促す。

私は友人の心を慮って、スノードームを逆さにしてみる。

すると、スマートフォンのアラームが鳴る。見てみれば、大雪警報発令だという。

私は驚いて友人の顔をうかがう。友人はしてやったり顔だ。

「どういう仕掛けなんだ」と私は友人に問う。

友人は答えず、ただ土産だとしかいわない。

私は何ともいえない気持ちになり、スノードームを落としてしまう。

友人の顔、飛び散る破片、降り始める雪‥‥。

日本の四季はもうダメかもしれない。

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