夏休みのある日、私は夏の暑さに負けて、冬が恋しくなる。
冬の時期にはあんなにうんざりした雪が、とてもきれいで幻想的なものに思えてくる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、滅多に会うことのない友人が訪ねてくる。
「雪を持ってきたんだ」と友人はいう。
私は、とりあえず家の中に案内する。
そしてお互いにソファーに座ると、友人は紙袋を私の前に差し出す。
「スノーパラダイス」というロゴがいかにも胡散臭い。
「開けてみろよ」と友人はワクワクしているようだ。
私はしかたなく紙袋の中をのぞく。
そこには箱が入っている。私は恐る恐る箱を取り出し、ビニールの厳重な包装を取りにかかる。
数分の時間をかけて開けてみれば、スノードームが入っている。
私はがっかりする。こんなの雪でも何でもないじゃないか。
しかし友人は目を輝かせて、「逆さにしてみろよ」と促す。
私は友人の心を慮って、スノードームを逆さにしてみる。
すると、スマートフォンのアラームが鳴る。見てみれば、大雪警報発令だという。
私は驚いて友人の顔をうかがう。友人はしてやったり顔だ。
「どういう仕掛けなんだ」と私は友人に問う。
友人は答えず、ただ土産だとしかいわない。
私は何ともいえない気持ちになり、スノードームを落としてしまう。
友人の顔、飛び散る破片、降り始める雪‥‥。
日本の四季はもうダメかもしれない。