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第3話 目覚め

「おい…!

おい、しっかり…!」


ひんやりとしたシーツの上でそう呼ぶ声がする。

額には氷水で濡らした布が乗せられており、頭からも熱が下がっていくのが分かった。


「ん…

こ、ここは…?」


私が目を覚ますと、心配そうな顔で私を覗き込むかなり美形の青年がいた。

年は私よりも2、3上だろうか?

銀髪は蚕の糸のように繊細な輝きを放ち、瞳は理知的な光をたたえつつ髪と同じ色をしている。

全体的に落ち着いた印象の彼を私はまじまじと見た。

こんなに美しい人は生まれて初めて見た。


もしかして、ここは天国で彼は天使?


しかし…

天蓋付きのベッドから広がるのは、風が吹き抜けるようにクリスタルの柱だけが輝く広々としたリビング…

すぐそばの外には噴水が水飛沫をあげて高らかに水を舞わしていた。


水…


喉、そう、喉が渇いて…


「…飲め」


彼は短くそう言うと、水の入った青のグラスを差し出した。


「あ、あり…がとう…」


声が上手く出ない。

喉に砂漠の砂が多少入ってしまったようだ。


私はごくごくとその水を飲んだ。


「どうだ…?

気分は?」


「はい、ありがとうございます…

少し…

落ち着きました…

あの、ここは…?」


「そなたは砂漠で危うく死にかけていた。

ここは、エリザテーラの王都、テーラだ。」


「そう…ですか…

エリザテーラ国の…」


砂漠の国エリザテーラ、聞いた事はある。

広い砂漠に囲まれたオアシスに王都があり、不思議な野菜や果物、動物、魔物が存在するとされる神秘の国だ。

その国の全貌はまだまだ解明されていないという。


「あの、重ねてお礼を言います。

危ない所をありがとうございました。

あの、あなたは…?」


私は尋ねた。


「私はこの国の第1王子・ファルーク=エリザテーラだ。

といっても、我が父である王は病に臥せっている為、私がほぼ政治を仕切っている。」


「そうですか。

ファルーク様。

あ、私はセフィラ=ハーティスと言います。

いえ、もうハーティスの名は名乗れませんが…」


「なぜ?」


「ハーティス家はガミール国の侯爵家ですが、私のスキルが家にふさわしくないと実家から追放されたのです…

それで…

馬車の御者に貴重品を持ち逃げされ、あの場に…」


私は説明した。


「そうか…

それは大変だっただろう…

心ゆくまでこの城に滞在すると良い。」


「あ、ありがとうございます…!

良いのですか!?」


「あぁ、そなたの寝顔を見ていると…

瞳の色が知りたくなったのだ…

そなたの瞳はオアシスの澄んだ水のように美しい…


では、ゆっくりされよ。」


そして、ファルーク様は去っていった。

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