そして、襟元が詰まった青のドレスに着替えたら私は、ファルーク様の元に向かった。
「いいね。
そなたに似合う。」
「あ、ありがとう…」
白皙の美貌を誇るファルーク様にそう言われて、私は赤くならずにはいられなかった。
彼の手を取り、私は外に出る。
そこには、黄金に彩られたロバの引く馬車があった。
ロバ…
可愛い…
私がロバにかまけていると、ファルーク様は困ったように笑った。
「参ったな…
ヒーローの座をロバに取られてしまったようだ。」
「ご、ごめんなさい、つい…!」
「いいんだ、行こうか。
セフィラ、さぁ、乗って。」
私はドレスを少したくし上げて、馬車に乗った。
ロバの馬車はゆっくりのったりと緩やかな坂道を下って行った。
「テーラ城のある、王都テーラには主に王族や王族に近しい貴族が住んでいる。
そして、テーラの周りにはオアシスの街
「リザテーラ…?」
「あぁ、この砂漠だらけの国に沸く、水によって潤った憩いの場だ。
きっと、気にいるさ。」
ファルーク様はおっしゃる。
そして、ロバ達は私たちをリザテーラに連れてきた。
土を固めて作った道路に、同じく土でできた家々…
どの家も屋根はほとんど無く、風通しの良い造りだ。
オアシスには、たくさんの井戸と湧き水の池があった。
その水の澄んでいる事、アクアブルーの水に太陽が反射してキラキラと輝いていた。
道路の脇の出店は、色とりどりの絨毯の上でやっており、珍しい野菜や果物、肉や魚が売っていた。
「わぁ!
とっても綺麗な街ですね!」
私はキョロキョロしながらそう言った。
「まぁな。
どうだ?
気に入ったろう?
暑いな。
そこの湧き水を飲もう。」
ファルーク様は言う。
「えぇ。」
その時、走ってきた子供とぶつかって私はよろけた。
「おいっ…!」
ファルーク様が私を支えるが…
二人揃って池の中に落ちた…
「ぶはっ…!
だ、大丈夫ですか!?
ファルーク様!?」
私は彼の元に泳ぐ。
「あ、あぁ…
ふっ…
ふっはっはっはっ!
こんなにずぶ濡れになったのは久しぶりだ!」
彼は顔をくしゃっとして笑い出した。
つられて私も笑う。
そうして、池から上がった私たちは服を絞りながら街を歩いた。
楽しかった。
とても。
ん?
そういえば私は婚約破棄もされたんだっけか?
でも、こんなに素敵な男性と居られるのも、全て追放されて婚約破棄されたおかげだろう…
そう思ってしまう。
そうして、夜の街灯に照らされたオアシスの街を2人で眺めてから、私たちは城に帰った。
「おやすみ…」
「おやすみなさい…」
そうして、夜は更けていく。