私たちはF地区に到着した。
確かに砂漠の砂が所々住居区に侵入し始めている。
「あそこです。
以前は飲み水場として賑わっていましたが…
湧き水が枯れては、商売もおざなりになるというものですからね。」
シャリフ様がおっしゃる。
確かにその湧き水は枯れていた。
「スキル、発動します!」
私は宣言してスキルを使って、枯れた湧き水の場所に手を当てた。
ファルーク様とシャリフ様はその様子をじっと見つめている。
あった!
水脈だわ!
だけど…
確かに途中で枯れてるし、生きてる水脈は少し遠い…
アレをここに繋げる為には…
えーと…
この水脈をこう変えて…
私は魔力をかなり消費した。
そして、湧き水の場から水飛沫が上がったのだ!
「おぉ、水の女神ウェディルだ!」
「みんな、湧き水が戻ったぞ!」
「あの女性が手を当てたら…!」
「水の女神だ!」
そんな民衆からの歓声が遠くに聞こえる。
ん?
遠く…?
私はその場に倒れていた。
魔力を使いすぎたのだ。
「セフィラ!」
そう言って私を抱き止めたのは、ファルーク様では無くシャリフ様だった…
あぁ、認められたのね…
私…
よかっ…た…
♦︎♦︎♦︎
目覚めると、そこはテーラ城の私の寝室だった。
寝室というか、リビングと一体化しているのだが…
「セフィラ、目覚めたか…!
良かった!」
ファルーク様が私の手を握っている。
「水の女神ウェディルよ…
大変失礼しました…
あなたの力確かに認めました…
度重なる無礼をどうかお許しください。」
そう言ってシャリフ様はひざまづき、反対側の手にキスを落とした。
「い、いえ!
良かったです!
水の女神ではありませんけど…」
「いいや、そうとも言い切れない。
この国にはある伝説があるのだ。」
ファルーク様が言う。
「ある伝説…?」
「"この地が砂に飲み込まれる時水の女神ウェディルが現れ、王子と結ばれてこの地を救うだろう。"とね。
あなたが水の女神だったのか…」
ファルーク様は私の手を強く握りしめて額に当てた。
「い、いえ、私は水の女神などでは…!」
「いいえ、あなたはこの国を救う女神に違いありません…
セフィラ、ずっとこの国に居てくれますよね?」
シャリフ様に熱い視線でそう言われて、私はかなり戸惑った。
「とにかく、今日はゆっくりと休め。
魔力を使いすぎたのだろうから。」
そして、ファルーク様とシャリフ様は出て行った。
私は少しだけ太陽の実の蜂蜜掛けを食べて、再び眠りについた。