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第7話 水の女神

私たちはF地区に到着した。

確かに砂漠の砂が所々住居区に侵入し始めている。


「あそこです。

以前は飲み水場として賑わっていましたが…

湧き水が枯れては、商売もおざなりになるというものですからね。」


シャリフ様がおっしゃる。


確かにその湧き水は枯れていた。


「スキル、発動します!」


私は宣言してスキルを使って、枯れた湧き水の場所に手を当てた。

ファルーク様とシャリフ様はその様子をじっと見つめている。


あった!

水脈だわ!


だけど…

確かに途中で枯れてるし、生きてる水脈は少し遠い…


アレをここに繋げる為には…


えーと…

この水脈をこう変えて…


私は魔力をかなり消費した。


そして、湧き水の場から水飛沫が上がったのだ!


「おぉ、水の女神ウェディルだ!」

「みんな、湧き水が戻ったぞ!」

「あの女性が手を当てたら…!」

「水の女神だ!」


そんな民衆からの歓声が遠くに聞こえる。


ん?

遠く…?


私はその場に倒れていた。

魔力を使いすぎたのだ。


「セフィラ!」


そう言って私を抱き止めたのは、ファルーク様では無くシャリフ様だった…


あぁ、認められたのね…

私…


よかっ…た…


♦︎♦︎♦︎


目覚めると、そこはテーラ城の私の寝室だった。

寝室というか、リビングと一体化しているのだが…


「セフィラ、目覚めたか…!

良かった!」


ファルーク様が私の手を握っている。


「水の女神ウェディルよ…

大変失礼しました…

あなたの力確かに認めました…

度重なる無礼をどうかお許しください。」


そう言ってシャリフ様はひざまづき、反対側の手にキスを落とした。


「い、いえ!

良かったです!

水の女神ではありませんけど…」


「いいや、そうとも言い切れない。

この国にはある伝説があるのだ。」


ファルーク様が言う。


「ある伝説…?」


「"この地が砂に飲み込まれる時水の女神ウェディルが現れ、王子と結ばれてこの地を救うだろう。"とね。


あなたが水の女神だったのか…」


ファルーク様は私の手を強く握りしめて額に当てた。


「い、いえ、私は水の女神などでは…!」


「いいえ、あなたはこの国を救う女神に違いありません…

セフィラ、ずっとこの国に居てくれますよね?」


シャリフ様に熱い視線でそう言われて、私はかなり戸惑った。


「とにかく、今日はゆっくりと休め。

魔力を使いすぎたのだろうから。」


そして、ファルーク様とシャリフ様は出て行った。


私は少しだけ太陽の実の蜂蜜掛けを食べて、再び眠りについた。





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