そんなこんなで、銀色のドレスに決まった。
私は舞踏会当日、髪を高く結い上げて、シルバーとパールの髪飾りにてゴージャスに飾りつけた。
銀色の華やかで繊細なドレスに袖を通すと、まるで、別人のようだった。
この砂漠の国エリザテーラでは身体にフィットしたドレスが多いが、これはフレアなザ・お姫様だった。
私はファルーク様達にエスコートされて会場に向かった。
「あれが水の女神だそうよ…」
「あら、大した事ありませんわよ。」
「いや、美しいだろ。」
「絶世の美姫とも噂よね。」
「まさに女神だ…」
絶賛する男性陣と羨望と嫉妬の眼差しで睨みつける女性陣。
「ファルーク様ぁ!」
「これは、これは、レティス令嬢。」
薔薇の華やかで可愛いらしいドレスを着た金髪巻き髪の女性がファルーク様に駆け寄ってくる。
レティス様とおっしゃるようだ。
「セフィラ、彼女はエリザテーラ屈指の侯爵家、アラカルト家のご令嬢レティスだ。」
ファルーク様は私に紹介する。
「初めまして、レティス様。
セフィラでございます。」
「初めまして…
ねぇ、あなたが水の女神って本当なのかしら…?」
「どういう意味だ、レティス?」
レティス様の言葉にファルーク様がいう。
「そのままの意味ですわ、ファルーク様。
水の女神と言えばいくつか伝承がありますわね。
例えば、聖女のように回復薬を無限に出現させる、ですとか…
ねぇ、少しその力を見せていただけません?」
彼女は意地悪く笑って言った。
「…わかりました。」
私は言って、中央に設置された魔法の泉に近づいた。
そして、念じた。
回復薬、つまりポーションを。
泉の水がだんだんとポーションの青色に染まっていく。
「水の女神だ…!」
「おぉ、神々しい!」
「素晴らしい…!」
会場の人々がひざまづき、私に頭を垂れる。
「ふ、ふん!
水の女神だからって良い気にならないでよね!
私はエリザテーラの経済を支える柱ですのよ!」
そして、レティス様は去っていった。
「見事だ、セフィラ。」
「いえ、ありがとうございます。」
ファルーク様に少しお辞儀する。
「水の女神は私とダンスしてくれるだろうか?」
「もちろん…」
私はファルーク様にリードされて、一曲をゆっくりと踊った。
人々は私とファルーク様のダンスに見惚れて、終わった頃には大喝采が上がった。
そして、シャリフ様、ザイード様、カリーム様とそれぞれダンスをして、その日の舞踏会はなんとか無事に終わったのだった。
「疲れただろう?
ゆっくり休んでくれ。」
ファルーク様はそう言って私の額にキスを落とした。