次の日、私とファルーク様はリザラの街を歩いていた。
「うーん、しかし、特産品と言われてもなぁ?」
ファルーク様は昨日の事などまるで無かったかのように、普通に接してくる。
その態度に微かに苛立ちながらも…
「そうですね、そんな物は無い。ではダメなのでしょうか?」
「そなた急に雑になるではないか…」
どっちが!
「しかし、思いつかないものは仕方ないではありませんか。」
「まぁ、そうだが…
ここは湧き水もよく出ているしなぁ。
そういえば最近ある所の湧き水が生温い、といっておったな。」
「生温い…?」
私は少し考えた。
もしかして…
「ファルーク様、その湧き水に案内してくださいませ!」
「あ、あぁ、こっちだ。」
ファルーク様について、ある湧き水に向かった。
確かに割と勢いよく湧いているが、ややぬるい。
私はスキル液体を発動して、水脈を探ってみる。
やっぱり!
「何かわかったのか?」
「ファルーク様、ここには温水脈が流れております。
今は生温い程度ですが、もし、水脈の動きを変えれば、温泉が吹き出しますわ。」
「温泉!?
この砂漠の地に温泉が、か!?」
「はい、少し下がってください。
割と大きな水脈ですの。」
私は温水脈の動きを変えた。
すると…
勢いよく温泉が吹き出したのだ!
これには、現地の人々もびっくり。
その日のうちに岩で囲って露天風呂が設置された。
♦︎♦︎♦︎
「いやぁ、ありがとうございます!
まさか、この地に温泉が出るとは!
夢にも思っていませんでした!!!
これは立派な特産品です!
水の女神様、重ねて礼を申し上げます。
ありがとうございます。」
ヤザーン侯爵はそう言って満足気に笑った。
こうして、北のオアシスの街リザラは、温泉街としても有名になり、熱い湯に入りたい人や腰痛や肩こりに悩んでいる人にとても重宝された。
そして、私たちのリザラの街の視察は終わったのであった。
私たちは久しぶりにテーラ城に戻った。
相変わらずファルーク様はぶっきらぼうだったが、熱い視線を感じることが増えたような気がする。
私が帰ってくると、待ってましたとばかりにザイード様が私の部屋を訪れた。
「どうされたのですか?」
私が尋ねると…
彼はそれには答えずに地図をテーブルの上に広げた。
そして、駒を配置した。
「これは?
戦…
いくさがあるのですか!?」
「そうだ…
この図を見ろ。
我が軍は約1万。
それに対して敵軍レデスト国は約2万だ。
俺は外交を担当している。
つまり、戦争も俺の担当なんだよ。」
ザイード様はおっしゃる。
「うーん、戦の場は林の前ですか…」
「あぁ、そうだ。
何かいい案はあるか?」