私が目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
が、真っ黒なシーツに大理石で縁取られたそのベッドは、私のものでは無いのは一目瞭然だった。
「あ、気がつきましたー?」
第5王子のアキレス様が本を読みながら、そう声をかけた。
「私…」
「ロパ君なら引き離して元の世界に返ときましたから、ご安心を。」
「…あなたねぇ!
どうしてあんな事を!?」
「研究者の私にとっては実験は大切なものです。はい。」
「あんな、変態な実験あってたまるもんですか!!!」
「いやぁ、ロパ君は改良の余地があるようですね。
今度はロパ+で…」
「結構です!!!」
私は勢いよくベッドから立ち上がる。
が、水分を大量に失ったせいで眩暈がする。
「ほらほら、言わんこっちゃ無い。
これ、飲んで。」
彼は水の入ったグラスを差し出した。
誰のせいだと…!
しかし、私は喉が渇きすぎてそれを飲む。
ごくごくと一気飲みした私は、改めて周りを見渡した。
漆黒で塗られた壁にインテリアはゴールドか大理石で統一されている。
「ここは…?」
「ここね、ふふふ。
ファルークさえも入れた事は無い、私の秘密基地ですよ。
ここに入る為には5つの魔法壁を破る必要があります。
まぁ、誰も入れないでしょうね。
ちなみに地下ですよ。」
「どうしてこんなところに…?」
「私は王子という柄じゃないし、人と関わるのも嫌いです。
ここで、実験に没頭するのが良いんですよ。」
「はぁ…」
「あなた、よく見ると可愛いですね。
とゆーか、あなたの母乳は甘くて濃厚で…」
「やーめーてー!!!
その話はしないで!
あんな変態な体験はもうごめんですっ!!!」
「残念、私の愛玩ペットとして飼おうと思ったのに…」
「とにかく地上に帰して!」
「えぇ、もう帰っちゃうんですかぁ?」
「帰るわよ!」
私はキッパリという。
「…こっちです。」
そして、彼の後についていくと…
色々な魔導具のある部屋を通った。
「これ…
全部あなたが…?」
「えぇ。」
「これ、変な形の魔導具ね…?」
「それは海水濾過魔導具です。
このタンクに海水を入れて淡水化して、貴重な塩を取り出すんですよ。
ほら、このエリザテーラは内陸国で塩が取れないでしょう?
その為に塩の価格は非常に高いんです。」
「へぇ…
なぜ使わないの?
埃かぶってるみたいだけど…」
「肝心の海水がないからですよ。
何度も言いますが、この国に海はありませんし、海水を運ぶとなると多大なお金がかかるのです。
それでは、意味ありませんからね。」
アキレス様は海水濾過魔導具をポンポンと叩くとまた歩き始めた。
「待って。
私海水を出せるかも…!?」
「え、おっぱいから!?」
「な訳あるかぁ!!!
この変態!!!
おっぱいから離れてください!!!
そうじゃなくて、私スキルが液体で、水系の物を出せるんです。」
「へぇ…!
それはすごいですね!
じゃあ、このタンクの中に海水を出せますか?」
「やってみる。」
私は頷くと海水を念じた。
タンクには海水がいっぱいになり、濾過魔導具が動き始めた。
「やりましたね…!」
「うん!」
「早速ファルークにこの魔導具を見せましょう!」
そして、高止まりしていた塩の価格はかなり安価になった。
ファルーク様はアキレス様が私と話しているのをすごく不思議がっていたけど、海水濾過魔導具についてはアキレス様を褒めていた。
アキレス様は照れ隠しのように少し斜めを向いて、そして、嬉しそうに笑った。