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第2話 第3王子

sideシャルルダルク


俺はその後、すぐに王宮に戻り、医者を呼んだ。


「異常無いように存じますが…」


「えぇい!

ちゃんと調べぬか!

毒を盛られたのだぞ!」


しかし、医者はわからぬというばかりで、一日様子を見る事になった。


俺は早めにベッドに入り、そして気がつけばぐっすりと眠っていた。

朝起きると、汗をかなりかいていて、バスローブはぐっしょりと濡れていた。


シャワーを浴びると、いつもの咳は全く出なくなっていた。


何故だ…?

アレは毒では無かった…?


では、あの女一体…?


俺はシャツに腕を通し、王族らしく身なりを整えると、紫陽花の後宮に向かった。


「まぁ、シャルルダルク様がお見えよ!」


「今日もお美しいわ!」


女官や姫達から歓声が上がる中、俺はそれを無視して地下牢に向かった。


「王子、このような所に!」


「よい、通せ。」


見張りを適当に退け、あの少女の檻に向かった。


少女は毛布も無い牢の中でうずくまって眠っていた。

貧相な身なりだが、なんとなく品がある、美しい少女だった。


「起きろ…」


「ん…?

あなたは……!」


少女は元々丸い瞳をまんまるにして俺を見る。


「そなた一体何者だ…?

あの薬は一体…?


わざと俺に飲ませたのか?」


「それは…」


少女は言い淀む。


「答えよ。

俺はこの国の第3王子だ。


不敬罪に処されたいか?」


「私が調合した薬にございます。

咳に効きますれば…

勝手にすり替えて申し訳ございませぬ…」


「そなたは調合の知識があるのか?」


「はい。

祖国の、ある辺境の村から授かった秘伝の知識でございます。」


「何の薬草かは言えぬ、という事か?」


俺は言う。


「申し訳ございませぬが、言えません。」


「俺に処した薬はどのくらいの間効くのだ?」


「丸一日は効きまする。」


「明日、その薬を用意しておけ。


おい!

この娘を牢より出せ!」


俺は言い、そして牢屋を去った。


調合の知識のある不思議な娘…か…


そういえば名前を聞いておらぬな。


あの服装は召使いの下のはずだ。


名前など、どうでも良いか。


珍しく、少女を気にかけている自分が、なんとなくおかしかった。


だが、もし、薬師としての力が本物ならば…

まさかな…


この国には、3人の高名な医師がおる。

それらには敵うまい。

所詮は少女の薬ごっこにすぎぬわ。


そして、久しぶりに咳が止まった俺は執務をハイスピードでこなしていった。

















次の日、俺は相変わらず紫陽花の後宮にやってきた。


あの少女に薬をもらうためだ。


やはり朝から少し咳が出る。


すると、少女は紫陽花の花壇の側に居た。







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